豊川市公共施設中長期保全計画 案
概要版
建物を永く活かして使っていくために
1 公共施設の現状と課題
計画期間
豊川市公共施設中長期保全計画は、中期的な視点にたった計画として、5期15年間の計画を作成した上で、第1期の平成28年度から平成30年度までの3年間の短期的な視点にたった計画として、保全計画書を作成します。
豊川市公共施設中長期保全計画の位置付け
豊川市公共施設中長期保全計画の位置付けは、「第6次豊川市総合計画」および「豊川市行政経営改革プラン」に即し、「豊川市公共施設等総合管理計画」における公共建築物に係る個別施設計画であり、長寿命化を図る施設保全業務を実施するための計画となります。
公共建築物の現状把握
用途別の延床面積の年度別整備状況
本市の用途別の公共建築物の延床面積は、1960年代中頃から80年代後半まで、学校教育施設の面積が多くを占めています。
耐震基準別の延床面積は、1981年度の建築基準法の改正により、旧耐震基準(1981年度以前)による建築物が257,548平方メートル(約55.2パーセント)、新耐震基準(1982年度以降)による建築物が209,702平方メートル(約44.8パーセント)となっています。
市の歳入歳出見込み
市の収入である歳入の内訳では、市税収入が歳入総額の5割弱程度となっています。今後予想される生産年齢人口の減少などに伴う個人市民税の影響等を考慮し、慎重な財政運営を行う必要があるものと考えられます。
市の支出である歳出の内訳では、義務的経費が占める割合が5割程度となっています。今後も少子高齢化の一層の進展により、義務的経費に含まれる扶助費等の増加が懸念されます。また、義務的経費の割合が増加することにより、投資的経費の割合が減少することが予測されます。
対象施設の選定
市営住宅などの木造・コンクリートブロック造(CB造)で築30年以上経過した施設を除いた施設を長寿命化対象施設と定めていきます。なお、今後も継続的な見直しを図っていきます。
劣化点検対象部位、判定基準
劣化点検の対象となる部位は、屋根、外装、内装、躯体、基礎、機械設備、電気設備、屋外の8部位を対象として実施し以下の判定基準に基づき4段階で評価します。
判定
劣化状況
A
健全(ひび割れやへこみなどの劣化が無い、または、殆ど無い状態。)
B
軽微な劣化がある状態(軽微なひび割れやへこみはあるものの、現状では修繕の必要が無い状態。)
C
重度の劣化がある状態(劣化が進行し、部材の交換や部分的な修繕が必要な状態。)
D
最重要部材に重度の劣化がある状態及び部材の機能が全く維持していない状態(劣化が著しく進行し、部材の交換・更新が必要な状態。)
公共建築物の劣化状況
概ね経過年数とともに劣化が進む傾向が見られますが、大規模改修などの実施により、一部の年代で劣化状況の改善が図られています。
2 課題のまとめと基本方針
課題のまとめ
(課題1)急増する老朽化建築物への対応
1970年代から80年代に整備された公共建築物は、築後40年以上を経過し、学校施設を中心に老朽化が進行していることが判明しました。場当たり的な修繕では、対応が追い付かずに安全性が損なわれる懸念があります。効率的な情報の収集等、必要なタイミングで必要な情報が取り出せる仕組みの構築が課題です。
(課題2)不足が予測される財源への対応
少子高齢化の進展に伴い、税収の減少等により、公共建築物に充てられる財源が不足することが懸念されていますが、公共建築物においても、不具合状況が顕在化しており、今後は突発的に修繕費用等が必要となる可能性があります。
(課題3)持続可能な公共サービスの提供
公共建築物は老朽化した後の建て替えの際に必要となる更新費に加え、市民に公共サービスを持続的に提供していくための費用として、人件費や水道光熱費などの維持運営費(ランニングコスト)が必要となり、これは更新費として必要な額よりも大きな金額となる可能性があります。
基本方針
(基本方針1)公共建築物の質の確保
公共建築物は、施設の安全性が適切に担保され、快適性等に配慮した施設機能を維持するために適切な内容および時期に修繕・改修工事を行い、質を確保し続けることが必要です。今後は、劣化点検や公共施設構造体耐久性調査を定期的に行い、工事履歴などの「施設情報の一元化」を行います。
(基本方針2)公共建築物のコストの縮減
公共建築物の質を確保するための費用(コスト)を縮減するために、修繕・改修工事を計画的・予防的に行うことにより、「公共建築物の長寿命化」を図ります。
(基本方針3)公共建築物にかかる支出予算の平準化
公共建築物のコストの縮減により、各年度の保全にかかる経費をできる限り抑制すると共に、「公共サービス水準」や「工事の優先順位」を定め、一時期に予算の支出が集中しないよう平準化に配慮し、必要性の高い工事から執行します。
3 改修、更新内容
改修周期、更新周期の設定
建物全体の建設費(用途別平方メートル単価×延床面積)に対する部位ごとの構成比率を設定して部位ごとの建設費を算出した上で、日常修繕と大規模改修それぞれの比率により、部位ごとの金額を算出します。
4 改修等のライフサイクルコストの試算
ライフサイクルコストの試算
ライフサイクルコストの計算式
長寿命化対策の効果を把握するため、対策として大規模改修を実施した場合(予防保全)と実施しなかった場合(事後保全)の費用を比較し、ライフサイクルコストの縮減効果を算定します。
大規模改修の実施の有無により、更新時期が異なることとし、下記の式により、単年度当たりのライフサイクルコストの縮減額を算出します。
単年度当たりライフサイクルコスト縮減額(C):(C0÷T0)−(C1÷T1)
C0:大規模改修を実施しなかった場合における、次期更新までに要する総費用
T0:大規模改修を実施しなかった場合の耐用年数
C1:大規模改修を実施した場合における、次期更新までに要する総費用
T1:大規模改修を実施した場合の延命後耐用年数
事後保全=(日常修繕費用+更新費用)÷耐用年数
注)ここでいう事後保全は、本市が今後、現状を踏まえ日常修繕を計画的に実施していくことを踏まえ、日常修繕を含んだものとしています。
予防保全の場合=(日常修繕費用+大規模改修費用+更新費用)÷延命後耐用年数
予防保全とは、施設を長寿命化するための保全管理の方法で、建物及び設備の異状の有無や兆候を事前に把握・予測することで計画的に改修を行い、故障による停止や事故を防ぎ、建築物の部材を適切に保全する方法。
工事優先度の評価、計算式
大規模改修や修繕等を行う際の優先性の評価として、評価項目を設定します。
各施設の部位ごとに6つの評価項目で点数を出し、その合計から優先順位を決めます。
P=A+(E×a)+H+T+Y
大規模改修・修繕等判定 P = 安全性 A+ 劣化度 E × 影響系数 a + 重要性及び公共性 H + 機能停止損害 T +代替性 Y
全施設を事後保全とした場合の試算結果
現在保有している建物の更新等費用を試算した結果、今後50年で約2,473億円、年平均では年間約49.5億円の費用が必要となります。近年の市の予算の規模19.9億円は、その40パーセント程度にとどまります。
予防保全を取り入れた場合の試算結果
大規模改修の実施を取入れ「予防保全」の管理を行った場合、今後50年で約2,086億円、年平均では年間約41.7億円の費用が必要となります。「事後保全」に比べ、総額約387億円の費用縮減が図れ、財政負担が軽減されます。
平準化の流れ
施設の修繕時期等が一定期間に集中した場合、予算制約を定め、費用の平準化を行います。
1 予算制約条件を設定します。
予算制約条件:段階的予算制約(5年以上の先送りを生じないよう、5年ごとに設定後、更に平準化を図るために10年以上の先送りを生じないように10年ごとに設定)
2 予算制約を超過する年度は、優先度の高い施設から実施し、金額をオーバーした段階で翌年度に先送りします。
(優先順位は、日常修繕、大規模改修、更新、撤去に関わらず設定します。)
3 翌年度以降、繰り返し計算を実施します。
段階的な予算制約で平準化した場合の試算結果
10年以上の先送りを生じない段階的な予算制約で平準化した結果、今後50年で約2,086億円、年平均では年間約41.7億円の費用が必要となります。2051年以降は、1970年代に集中的に整備された公共建築物の更新時期が到来するため、大幅に費用が増加しています。
中期的な視点に立った保全計画(15年)
10年間で先送りを生じないよう平準化したシミュレーション結果について、中期的な視点に立った保全計画として、15年間を5期に区分し、3年ごとに施設分類ごとにかかる更新・修繕費を整理します。
短期的な視点に立った保全計画(3年)
5 今後の展開
計画の推進に向けて
本計画で示した施設の長寿命化等を基本とし、維持保全に向けて各公共建築物の耐用年数や毎年度の工事の実施状況、劣化状況等を常に把握する必要があります。そのために、以下の事項を推進していきます。
a 公共建築物に関する情報の一元管理
公共建築物に関する情報について、全庁的に一元管理を行います。各施設の台帳のデータベース化を進め、修繕履歴等の情報入力の実施体制を構築し、データベースの管理は、所管課等と連携して行っていきます。
b 計画の推進体制
公共建築物の管理について部署横断的な組織として財産管理課を中心に、所管課、建築課及び財政課と連携して、全庁的に公共建築物のマネジメントを推進します。
c 人材の育成
技術職員の専門知識の蓄積、点検や修繕等の業務に関する技術力向上に努めます。また、社会動向や市の財政状況を勘案しつつ、将来の技術職員の採用を含めた中長期的な視点に立った人材育成の取組を進めていきます。
d 実現可能な年次計画(3ヵ年から15ヵ年)
各年度に実施する工事の総量は、市の財政状況や需要等に応じて調整し、15年間の中期的な保全計画を立て、直近の3年間は短期的な保全計画として抽出し、保全計画が適切に執行できるよう、各年度の財政や施設状況に応じて見直しを行います。
e PDCAサイクル
施設の点検・劣化度調査、施設管理者による日常点検等を適切に実施し、必要な対策を行うとともに、計画に基づき実施した予防保全の結果等の情報を適切に管理・蓄積し、次の点検・診断に活用する、というPDCAサイクルの構築を推進していきます。
f 公共施設の再編等との連携
経営的な視点から検討を行い、公共施設の縮減に向け、第6次豊川市総合計画や公共施設適正配置計画および公共施設等総合管理計画との連携を図りながら進めます。
g 公民連携の推進
PPP・PFI等の民間の資金とノウハウを活用し、効率的かつ効果的な公共サービスの提供に向けた検討を行い、新たな公共の担い手への事業移管を推進し市民サービスの維持、向上を図ります。
豊川市役所 総務部 財産管理課
電話:0533-89-2108
FAX:0533-89-2163