「広報とよかわ」2018年11月号(特集)
更新日:2018年11月1日
歯はみんなの宝物
11月8日は「いい(11)歯(8)の日」です。歯は、ごはんなどをおいしく食べるためだけでなく、話すことや表情を作ることを助けたり、体のバランスを整えたり、かむことで脳に刺激を与えたりと、生活に不可欠な役割を持っています。
最近では、むし歯や歯周病など、口の病気が体全体に影響することがわかり、口の健康を保つことが重要視されています。
今回の特集では、歯の病気やケアの方法、市や団体が行う口の健康のための取り組みなどを紹介します。
詳しいことは、保健センター(電話:0533-89-0610)へ、お問い合わせください。
知っていますか? お口のトラブル
歯は、生後7カ月から8カ月頃から、子どもの歯である「乳歯」が生え始め、6歳から12歳頃までに大人の歯である「永久歯」に生え変わり、その後、一生付き合っていくことになります。口の健康を保っていくために、歯の病気など、口のトラブルについて知っておきましょう。
- むし歯
むし歯は、口の中のミュータンス菌が作る酸により、歯のカルシウムが溶かされ、穴が開いてしまう病気です。食べ物に含まれる糖質が酸の材料となるため、甘い物をよく口にする習慣のある人は、むし歯になりやすくなります。
要チェック!
乳歯のむし歯が重症化すると、その下にある永久歯に悪影響を与えることも。「どうせ生え変わるから」という考えは危険です。
豊川市のむし歯の現状
豊川市は、むし歯のある12歳児の割合が県内の市でワースト1となっています。(平成28年度)
愛知県平均24パーセント
東三河平均27パーセント
豊川市38パーセント
【出典 愛知県地域歯科保健業務状況報告】
- 歯周病
歯周病は、歯茎や歯を支える骨などが破壊される病気です。歯と歯茎の隙間の歯周ポケットで増殖する歯周病菌が出す毒素が原因で、歯茎に腫れや出血が起きます。症状が進行すると、歯を支える骨が溶け、歯を失ってしまいます。
要チェック!
実は、30歳代以上の8割がかかっている身近な病気。肥満度の高い人ほど歯周病になる確率が高いともいわれています。
- オーラルフレイル
高齢期の口の機能低下をオーラルフレイルといいます。歯を失うことなどにより、物をかむ力や飲み込む力が弱くなり、食欲が低下したり、栄養不足になったりします。また、うまく口を動かせず、会話もスムーズにできなくなります。
要チェック!
進行すると、人に会うことや外出することなどの社会生活を活発に行えなくなります。また、誤嚥性肺炎も引き起こしやすくなります。
災害時こそ、お口のケアを!
平成7年に発生した阪神淡路大震災では、災害関連死の第1位、約4分の1が肺炎で、そのうちのほとんどが、口の中の歯周病菌などが誤って気管に入って起こる誤嚥性肺炎でした。
水不足などにより長期間、歯磨きができない避難生活の中でも、口のケアをするための準備が必要です。家庭で用意している防災グッズに、口腔ケアグッズを加えましょう。
【準備しておきたい口腔ケアグッズ】
ウェットティッシュ、歯ブラシ、キシリトール入りガム、マウスウォッシュ
専門医に聞く
豊川市歯科医師会会長 平野義雄歯科医師
口の病気は予防・早期発見・早期治療を
最近では、口の健康を保つことの重要性が認知され、むし歯の患者さんの数も減ってきていると感じます。定期的に診察に来る患者さんも増えています。ただその一方で、重症化してしまう方がいまだにいるのも事実です。
また、むし歯と並んで代表的な歯の病気が歯周病です。加齢が原因と思われがちですが、20歳代など若くてもかかる方がいます。重症化すると歯が抜けてしまうだけでなく、糖尿病や動脈硬化など、他の病気の悪化にもつながることがわかっています。
歯は、一度病気になってしまうと元の健康な状態に戻すことができません。予防・早期発見・早期治療が重要です。
普段から自分の口の中を意識する
口の健康を保つためには、普段からのセルフケアがたいせつです。歯の病気は自覚症状が現れにくいのが特徴ですが、毎日歯の様子をチェックしていれば、ちょっとした歯の汚れや歯茎の腫れなどに気づくことができます。鏡を使って自分の歯を観察する習慣をつけましょう。
当然、歯磨きも必要です。しっかりと磨いているつもりでも、全体の5割程度しか磨けていない方が多いと思います。歯ブラシだけでは歯の表面しか磨くことができません。デンタルフロスと歯間ブラシを一緒に使い、歯ブラシの届かない歯と歯の間も掃除しましょう。一度治療した歯も、かぶせものの隙間などからむし歯になることがあるので要注意です。
また、セルフケアと併せて、歯科医院での診察も定期的に受けましょう。正常な方でも、年に2回程度、歯科医師に様子を見せるようにしてください。
歯の病気は、口の中の問題だけでなく、体全体に影響を与えます。口は食べ物の入り口であるとともに、健康の入り口でもあります。日常生活の中で、自分の歯について意識するように心掛けましょう。
フッ化物のチカラ
フッ化物は、歯の表面のエナメル質を強化して酸に溶けにくくするとともに、むし歯菌が歯を溶かそうとする働きを弱めます。また、歯を修復する再石灰化も促進します。歯が未熟で、むし歯の注意年齢である5歳から15歳までの時期に利用すると効果的です。
市では、子どものむし歯を減らすため、保育所や幼稚園、小学校でのフッ化物洗口の普及を進めています。
【フッ化物の利用法】
毎日の歯磨きにフッ化物配合の歯磨き剤を使いましょう。その場合、歯磨き後のうがいは1回にしてください。うまく歯磨きなどができない小さな子どもは、歯科医院などでフッ化物を塗布してもらいましょう。
確認しよう! お口のライフサイクル
歯や口の中の状況は年代ごとに違い、それぞれに合ったケアが必要です。ここでは、口のライフサイクルの特徴と、それに合わせた市の取り組みを紹介します。
- 妊産婦期
妊娠中は、女性ホルモンの分泌増加により、歯茎が腫れたり、出血したりしやすくなります。また、この時期の口腔状態が胎児にも影響を与えるため、歯の健診などが重要になります。
市の取り組み
妊産婦歯科健診(妊産婦)
女性のための歯っぴ~教室(妊産婦)
- 乳幼児期
乳歯は生後8カ月頃から生え始め、3歳頃までに生えそろいます。その後の2年から3年がもっともむし歯になりやすい時期です。定期的な健診とともに、歯磨きの習慣づけがたいせつです。
市の取り組み
モグモグ教室(5カ月児)
親子ピタ・コチョ教室(9カ月児)
乳幼児健診(1歳6カ月児、2歳児、3歳児)
育児相談(乳幼児)
- 学童・思春期
永久歯に生え変わる6歳から12歳頃は歯が未熟なため、強化が必要です。また、思春期は歯と歯茎のトラブルが起きやすくなります。正しい歯磨き、歯茎のチェックなどが重要です。
市の取り組み
園歯科健診(園児)
ピタ・コチョ運動(園児)
フッ化物洗口(園児、小学生)
学校歯科健診・保健学習(小学生、中学生、高校生)
- 成人・壮年期
歯周病になる人が増加する時期です。仕事などの忙しさで歯のケアを怠りがちになりますが、痛みなどがなくても、定期的な健診の受診や、セルフケアの見直しが必要になります。
市の取り組み
成人歯科健診(20歳から70歳まで)
糖尿病ゼミナール(一般)
健口講座 (一般)
生涯学習まちづくり出前講座(一般)
- 高齢期
65歳以上になると、歯を失うケースが増えてきます。また、飲み込む力なども衰えてくるため、口全体の機能を低下させないためのトレーニングなどを行う必要があります。
市の取り組み
65歳これから講座(65歳から74歳まで)
介護予防教室(65歳以上)
8020めざそう会(65歳以上)
8020表彰(80歳以上)
出前講座「介護予防ってなに?」(高齢者)
Interview
歯の健康が、元気の源です
8020達成者 堀川義郎 さん(89歳)
80歳のときに8020表彰をいただきました。歯の健康に気をつけるようになったのは50歳のとき、むし歯になったことがきっかけでした。今では歯磨きに加え、起床後に口をゆすぐことも心掛けています。歯が健康なおかげで、何でも食べられ、元気に過ごせています。90歳で20本の歯を目指します。
8020(はちまるにいまる)運動
厚生労働省と日本歯科医師会が展開する、80歳で20本以上の歯を保つことを推進する運動。市でも、8020を目指す方の登録や講座の開催、達成者の表彰などを実施しています。
各団体の取り組み
市内では、行政だけでなく、地域や関係団体が連携しながら、歯や口に関する知識の普及、歯科医院への受診の啓発などのための取り組みを進めています。
- 歯科医師会
各歯科医院で治療や健診を行うとともに、市と協力し、親子で歯のたいせつさを学べるイベントや障害者の歯科健診事業なども開催しています。また、8020表彰も行っています。
- 歯科衛生士会
防災関連や介護予防などの講座やイベントで、市などと協働し、災害時の口腔ケアや高齢者の口の健康の重要性を伝える取り組みなどを行っています。
- ボランティア
市民ボランティアが市と協働して、市内の園や学校などへ出向き、子どもたちが体験を通して楽しく学べる講座を行っています。
- 園・学校
市内の各園・学校では、歯磨きタイムやフッ化物洗口、健康集会など、子どもたちが歯や口の健康について自ら考え、実践する場を提供しています。
歯はみんなの宝物です
歯は、生活のためになくてはならないものです。市では今後も、地域や関係団体と一緒に、口の健康を保つためのさまざまな取り組みを進めていきます。セルフケアや定期的な健診などを意識し、歯と口の環境を整えて、健康な毎日を過ごしましょう。
覚えよう!ピタ・コチョみがき
市では、歯ブラシを歯にピタッと当ててコチョコチョ磨く「ピタ・コチョみがき」を推奨しています。市内保育園の保育士デュオ作成のオリジナル「ピタ・コチョソング」も聞きながら、楽しく歯磨きしましょう。