消防隊員からのメッセージ

更新日:2025年01月30日

ページID : 11910
灰色の消防服とヘルメットを着用した消防隊員のイラスト

消防職員からのメッセージを聞いて下さい!

住民と共に

「危ないから下がって!」
 災害現場で、付近の住民や野次馬に対し、私は何度かこう叫んだことがあります。しかし、その言葉について考えさせられる出来事がありました。それは、家族だんらんの夕食時に住宅密集地で起きた火災でのことです。
現場付近の道は狭く、部署した位置は、火点までおよそ200メートルほどあり、ホース延長はきわめて困難なものとなりました。ブロック塀やフェンスを乗り越え、家と家との隙間や庭を駆け抜けて、ようやく火点の近くまで来た時、私は呆然と立ちつくしていました。そこは家と家とが密着し、どちらからも回り込めない状況でした。
「早く放水しなければ!どうすればいいんだ…」
と炎を間近に見ながら気持ちばかり焦り、何も解決策を見いだせないでいたその時、私たちの行く手を阻んでいたその家に、その家の家人と思われる老夫婦が、玄関を開け、再び中へ入って行こうとするのです。
「危ないから下がって!」
私は思わず強い口調で叫びました。すると、その老夫婦は
「こっちだ!ここを通りなさい。」
と私たちに向かって手まねきをし、中を通れというのです。私が「えっ?しかし…」と少し躊躇した瞬間、一緒にいた先輩は「これしかない」と決心したかのように
「すみません。」
と軽く頭を下げ、よし行くぞとばかりに、家の中へホースをのばし始めたのです。

そのとき私は、戸惑う私たちに協力した老夫婦の勇気ある行動に対し、一瞬でも「消火作業のじゃまだ!」を思ってしまった自分を情けなく思いながら、家の中へと入って行きました。緊急時とはいえまだ燃えてもいない家の中へ土足でホースをのばすということは、私にとって大変心苦しいものでしたが、居間を抜け、窓から外へ出ると、燃えさかる炎が目前まで迫り、プロパンガスは轟音を立てて火を噴き、いまにも老夫婦の家に燃え移ろうとしていました。私はすぐに放水を開始しながら、活路を開いてくれた老夫婦のためにも「ここで絶対延焼を阻止するぞ!」という気持ちでいっぱいでした。老夫婦のおかげで、私たちは延焼防止に最適な場所に部署し、悪戦苦闘をしながらも、火災を鎮圧することができたのです。
ホースを収納していると
「家が燃えずにすみ、ありがとうございました。」と
寝巻き姿に裸足の老夫婦から声を掛けられ
「お二人のおかげです。私たちも本当に助かりました。」
とお礼を言い、帰署後この火災について考えてみました。
 私は今まで、付近住民の協力や気持ちを考えた消火活動をしていたであろうか…?
火を消すのは私たちに任せて、安全なところへ避難していてくれればいいと、ただ住民を現場から遠ざけ、消火活動がしやすいように自分勝手な考えで活動していたことが、大きな間違えだと気付きました。出動すれば、手招きをし、指を指して現場を教えてくれる人、私たちが到着するまでに消火活動をしてくれる人、現場の状況や情報を教えてくれる人、この様な付近住民の協力があってこそ、私たち消防隊の活動もスムースに行くのです。
災害に立ち向かう果敢さ、被害を最小限にくい止めようとする強い思いは消防隊も、住民の人たちも同じ気持ちではないでしょうか。
 私はこれからも、多くの火災に出動すると思います。あの老夫婦との体験を教訓にし、住民の協力に感謝の気持ちを忘れることなく、また、住民の気持ちが分かる消防士を目指し努力していきたいと思います。

この記事に関するお問い合わせ先

消防本部 総務課
所在地:442-8601
愛知県豊川市諏訪1丁目1番地
電話番号:0533-89-9516
ファックス番号:0533-89-9523
お問い合わせフォーム(メールフォームへリンクします)
この情報はお役に立ちましたか?

より良いホームページにするために皆様のご意見をお聞かせください。

このページの内容はわかりやすかったですか。
このページに対してご意見がありましたらご記入ください。
ご質問や個人情報が含まれるご意見は、このページのお問い合わせ先へご連絡ください。この欄に入力されてもお答えできません。