言葉の壁を越え、子どもたちを支える

更新日:2025年12月25日

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こぎつね教室 / 日本語教師兼コーディネーター 本多章義・主任日本語教師 木村有紀
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豊川市は、日本語教室「こぎつね教室」を直営で開いてる。日本語が不十分で、学校生活に困っている外国籍や外国にルーツを持つ子どもたちを対象とした無料の教室で、2010年に開設。子どもたちが、安心してスムーズに日本の学校生活になじめるよう、日本語学習のサポートなどを行っている。この制度を目当てに、「子どものことを考えて豊川市を選んだと、わざわざ他県から移り住んでくる外国人家族もいるほどだ。
そんなこぎつね教室で現場をまとめている、コーディネーターの本多章義さんと主任日本語教師の木村有紀さんに話を聞いた。

念願の日本語教師。こぎつね教室の職員に

コーディネーターの本多さんは市内出身。2012年から働いている。市の担当課や学校との連携、保護者との連絡などを担当するパイプ役を主な仕事とし、日本語の指導も行う。
大学在学中に教員免許を取得。日本語教師になりたいという夢があったが、当時はまだその職業が一般的ではなく、就職先も限られていたため、あきらめた。しかし、20代後半、岡崎市内の日本語学校に「日本語教員養成講座」が開校したことで、再びその道を目指すチャンスが巡ってきた。一期生として入学。講座の受講を経て念願の資格を取り、その日本語学校で教師になった。しかし6年後、体調不良で退職。休養中に「こぎつね教室」の職員募集を見つけた。「日本語教育の現場への復職は狭き門。半ばあきらめていたので、採用された時はうれしかったです」と語る。

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日本語教師になりたての頃の本多さん


 

一方、木村さんは東京都出身。2013年に「こぎつね教室」の日本語教師になり、教師の中心的な存在として活動している。スペイン語が話せるため、スペイン語圏の子どもや親とのコミュニケーションにも一役買っており、日本語指導助手として市内の学校にも訪れている。
短期大学で英語を学んだのち、親戚の影響で日本語教師という仕事を知って都内の養成講座に通うようになった。資格をとり、JICAを通じてメキシコで3年間、日本語を教えた経験がある。その縁でメキシコ人の男性と結婚。しばらくはメキシコで暮らし、その間にスペイン語を習得した。日本に帰国後は、外資系の企業に勤める夫の仕事の関係で、豊川市内に移住。豊川では子育てなどをしながら、「いつかまた、日本語を教える仕事がしたい」とアンテナを伸ばし続け、「こぎつね教室」にたどり着いたのだった。

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メキシコで日本語を教えていた頃の木村さん

外国にルーツを持つ子どもたちに言葉や文化を教える

こぎつね教室は市内の公立校に通う、または、通う予定の小学1年生~中学3年生が対象。市内のプリオビル5階にある教室で、言葉の学習をメインに、季節行事や農作業体験などを通じて文化を理解したり、交流を深めたりする取り組みもしている。授業は月曜から木曜の午後。複数人の日本語教師たちがレベルや年齢などに合わせたきめ細やかな少人数指導を行い、子どもたちは原則6か月で卒室する。現在、出身国で最も多いのはブラジル、次いでフィリピン。以前はこの2つの国が大半を占めていたが、最近はアジアの国々を中心に、教室の中も多国籍化している。
教室のスタート時には数人だった児童・生徒も、今では常時約30人。同時に指導するのは難しく、現在は30人を「月・水クラス」「火・木クラス」の2つに分けて開いている。
こうして2024年度には、教室で学んだ子どもたちの総数は600人を超えた。

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農業体験のトウモロコシ収穫

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6か月の学習を終えて卒室のあいさつをする児童

手作りの教材づくりに試行錯誤

「こぎつね教室」は、国の補助金を受けて始まった。充実した運営がされていたが、その後、補助金が終了したことで教室が縮小。日本語教師資格を持った本多さんと木村さんなど少人数のスタッフが残り、教材作りからスタートした。「決まったテキストはなく、プリントやテストなども自分たちで考えて、ほとんどを手作りしていました。本当に試行錯誤の日々でした」。その後、新たに創設された国の補助を受けたことで日本語教師の数も増え、教室運営は再び安定した。

指導は基本的に日本語で行われるため、出身国による教え方の違いはほとんどない。しかし、子どもたちの国民性や性格を考慮しながら、細やかな指導が求められる繊細な仕事だ。まったく日本語が分からない子どもたちと、意思疎通ができるようになるまでが大変だ。それでも子どもたちの吸収力は驚くべきもの。彼らの成長を実感できるのは大きなやりがいだ。

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視覚教材で、わかりやすく

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漢字の指導も念入りに

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コミュニケーションは最高のツール

コロナ禍を機にオンライン授業に挑戦

2021年、新型コロナウイルス感染症を受けて、こぎつね教室はオンライン授業を始めた。そこをきっかけに、コロナが明けたあとも中学生に向けたオンライン授業は継続。教室を卒業した中学生からも希望者を募り、高校入試の面接対策、問題集を使った授業、漢字の勉強などを行っている。
実は、小学生には送迎サービスがあるが、中学生になると自分たちで通う必要があり、市内でも遠方に住む中学生にとって通うことは大きな負担だ。オンライン授業はこの課題を解消する有効な手段にもなる。それに、日本語を学ぶ期間を比較的長くとれる小学生に対して、中学生は短期間で進路決定に必要な日本語と学力を身につけなければならない。しゃべれないことは切実な問題だ。各々に応じた指導が顔を見てできるのが強みだ。

こぎつね教室のこれから

今後について市は、オンライン授業や、未就学児を対象とした親子プレスクールにもより一層力を入れ、初期日本語指導を必要としているすべての子どもが学べるように受け入れ体制の充実を目指す。

本多さんは「教室はもう手狭です。もっと広い場所で、毎日全員が学べる場所をつくりたい。あとは、たった6か月という学習期限に縛られずに指導が出来たら、子どもたちはもっと話せるようになって、学校生活で確かな居場所ができると思います」と強く願い、木村さんもその思いに深く共感。「ここを6か月で卒業して、地元の学校に入ってからいろいろな問題が出てくると思うんです。基本的に日本語を理解していないと勉強についていけなくなってしまうかもしれませんし。卒室後もフォローし続けられる体制が必要だと考えています」と前を向いた。

外国人生徒に勉強を教える木村さん

DATA

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こぎつね教室

豊川市直営の、子どもの日本語教室。

日本語が不十分で市内の小学校や中学校に不登校や不就学等となっている外国にルーツのある子どものために、小中学校への円滑な転入を進めることを目的として無料で開いている。この教室では学校生活に必要な基礎的な日本語を学ぶことができる。