「キクラゲの妖精・けっぴー」の挑戦

更新日:2025年07月17日

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株式会社 木耳のお店 代表 喚田恵子
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2024年にオープンした甘味処「よび田屋」(豊川稲荷門前町で)

ぷるぷるコリコリッーーー 独特の食感がクセになるキノコの仲間「キクラゲ(木耳)」。国内流通の95%以上が中国産で、国産は希少とされるなか、豊川産キクラゲで地域の魅力発信に取り組む女性がいる。キクラゲの妖精「けっぴー」こと、喚田恵子(よびたけいこ)さん、その人だ。アフロヘアにビビッドなピンクの衣装というインパクト抜群の姿で、生キクラゲや加工品のPR活動に日々奔走している。2024年4月には、豊川稲荷の門前町に甘味処「よび田屋」をグランドオープン。キクラゲを使った創作和スイーツが話題を呼んでいる。

家族で東京からUターン。家はそろばん教室

東京都生まれ。1歳のとき、東京の上場企業に勤めていた父と母、4歳上の姉と自分の一家4人で父の故郷・愛知県豊川市に移住した。父がUターンした理由は、体調を崩した祖父を支えるためだったという。祖父は地元でそろばん教室を開いており、父もその跡を継いで、同じくそろばんの先生として地元での生活を始めた。
幼いころから、生活の中にそろばんが当たり前のようにあった。当時のそろばん教室は、ほぼ毎日のように開かれていて、学校が終われば教室へ通うのが日課。自分も最初のうちは楽しく通っていたが、成長するにつれて次第に足が重くなり、通うのが嫌でたまらない時期もあった。それでも高校2年生まで続け、全国大会にも出場でき、そろばん4段と暗算6段の資格も取得。商売をするようになって、その大切さを実感している。

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実家はそろばん塾

人と違うことをして目立ちたい!

振り返ると、自分はごく普通の女の子。元気で明るい性格ではあったけれど、人前に立つような存在ではなかった。中学生になるとおしゃれに目覚め、さらに「人と違うことをして目立ちたい」という欲求が生まれた。個性的な髪形に挑戦したり、高校生になると、しつけに厳しい両親に反発。思春期特有の、あふれるエネルギーを抑えられずにいた。

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成人式の時。目立ちたくて金髪にしていた

パチンコ業界でビジネスを学ぶ

卒業後はやりたいことが見つからず、パチンコ店などで時間をつぶすようになった。最初は、ただの暇つぶしだったけれど、次第にその魅力に引き込まれていった。一時は真剣に「パチプロ」を目指すほど儲け、パチンコの才能があると勘違いしてしまった。しかし当然ながら現実は甘くなく、ほどなくプロへの道は断念した。

ただ、これをきっかけに、娯楽を提供する側としてのパチンコ業界に興味を持ち、市内の店舗に就職。現場での顧客対応からパチンコ台の調整までさまざまな経験をした。その後、店内で顧客にドリンクなどを提供する「ワゴンサービス」の会社に転職し、店舗に併設するうどん店やカフェなどの開業に携わり、忙しく県内外を飛び回った。今思うと「もっとああすれば良かった、こうすれば良かった…」と後悔ばかりが頭に浮かぶけれど、その時の経験は今につながる大切な財産になっている。

国産キクラゲと出会う。 結婚・離婚を経験して

その後に結婚。出産を経て専業主婦になり、三重県内で暮らした。趣味の木工に熱中し、家事や育児に専念した。そんななか、2013年には家を建てるため、実家がある豊川市に戻った。始めのうちは趣味だった木工が活かせる仕事をしようと、市内のエクステリア・ガーデン店で働いた。そんな時に福祉施設をしている友人を通じて、施設で生産されている「国産キクラゲ」を知った。

のちに離婚を経験し、キクラゲに興味を持ったことで、人生の舵は思いがけない方向に大きく切られたのだった。

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けっぴー誕生前。おしゃれな雰囲気でキクラゲを紹介していた頃

人生の転機。 「スーパーフード・キクラゲ」生産へ

キクラゲを知るきっかけとなった友人に頼まれ、就労継続支援B型事業所新事業所「グリーンフィールド」の立ち上げに携わった。そこで出会ったのが代表を務める喚田康平さん、現在の伴侶だ。これが今につながる人生の大きな転機に。キクラゲの魅力にすっかり取りつかれたのだ。キクラゲは栄養価が高く、特に国産の歯ごたえの良さは絶品。「これはまさにスーパーフード。多くの人たちに知ってもらいたい」と思った。

乾燥キクラゲの販売を経て、利用者さんたちの工賃アップなどを目指して2020年には生キクラゲの栽培に乗り出した。翌年の2021年、「きくらげラー油」などの佃煮販売を開始。順調なスタートを切ったと思った矢先、その年の6月終わり、ハウスに害虫が発生し、キクラゲが全滅。国産原料にこだわった菌床を使い、安心安全な作物を作りたいと思って無農薬にこだわっていたが、確かに手探り状態だった。それでも、「下を向いてはいられない」と前を向いた。今ではその失敗があったからこそハウス管理を徹底し、現在の高いクオリティーや、障害のある人たちへの信用につながったと思っている。

障害のある人たちと仕事をするのは初めてだったが、素のままの自分をさらけ出せる雰囲気が心地よく、楽しく、これが天職だと強く感じた。

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ハウスで育てている肉厚でフレッシュな生キクラゲ

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安心安全な乾燥キクラゲ

「キクラゲの妖精・けっぴー」誕生。キクラゲを豊川名産に

栽培だけでなく販売にも力を入れようと、イベントなどに出たものの、認知度や売り上げは今一歩。そんな時に市内の砥鹿神社であったマルシェに出店。ハロウィンシーズンだったので、「キクラゲが頭から生えてきた」体でアフロのかつらをかぶって行くと、反響が。さらに色々なカラーの衣装で登場するようになり、中でも一番評判が良かったのがピンク。キクラゲの妖精「けっぴー」の誕生だ。こうしてキャラクターとなって活動してみると、楽しくてやめられないと思った。

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派手な衣装がトレードマーク、キクラゲの妖精「けっぴー」

佃煮のビンのラベルも、地味なものから、けっぴーがデザインされている派手なものにした。はじめは陳列を渋っていた取引先のお店にも、結果的には「売り上げが増えたよ」と喜ばれた。さらにお昼のバラエティ番組などでも紹介され、利用者さんたちの中にも笑顔が広がっている。そんな中、2021年には株式会社「木耳のお店」を立ち上げ、代表兼営業部門の顔として、新規開拓、SNS運用、イベント参加など、日々奮闘中だ。

夢は「キクラゲで日本一になること」そして、そのキクラゲを豊川の名産にすることだ。よび田屋では、キクラゲを食べてもらう機会を増やそうと、キクラゲを使ったわらび餅などを販売。豊川稲荷門前の活性化にも貢献できればと意気込んでいる。

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愛知万博20周年記念事業に参加。愛・地球博の公式キャラクター「キッコロ」がご来店

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愛知万博20周年記念事業。豊川市を盛り上げる活動をしているキャサリンと

住み心地がいい豊川で子育て

プライベートでは、普通の主婦。下の子どもはまだ2歳で忙しい毎日だ。ただ豊川という土地は、人々が温かく、支えあいの風土があって住み心地がいい。

市内にはいくつもの産直があり、作物の栽培も販売もしやすいところで、仕事も張り合いがある。今後も行政などと協力し合いながら、地域を盛り上げていきたい。


 

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キクラゲが入ったヘルシーなお弁当

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仕事の合間をぬって、娘と市内の公園へ

DATA

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喚田恵子(よびたけいこ)

東京生まれ、豊川育ち。「株式会社 木耳のお店」代表。国産キクラゲの魅力に取りつかれ、キクラゲの妖精「けっぴー」として、広報活動に力を注ぐ。

【SNS】

木耳のお店Instagram

甘味処 よび田屋Instagram

グリーンフィールド@きくらげ直売所Instagram

木耳のお店(きくらげのおみせ)X(旧Twitter)

キクラゲの妖精けっぴー

キクラゲの妖精けっぴー

母はキクラゲ農家の喚田恵子さん。

キクラゲの魅力に魅せられた母の英才教育を受け、キクラゲ日本一を目指し普及活動に勤しむ。テレビやラジオ、新聞など様々なメディアにも出演。
 

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