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豊川市人材育成基本方針(平成15年度7月策定)

更新日:2013年1月4日

豊川市人材育成基本方針表紙

目次

資料編

1 人材育成基本方針が必要とされる背景

 自治体が市民の期待に応え、的確な運営をしていくためには、職員一人ひとりが意欲と情熱を持って職務に取り組み、市民の役に立つ人材として育っていくことが重要です。
 さらに、今後の地方分権の進展に対応し、自律性を持ってその責任を果たしていかなければなりません。また、民間との役割分担の再編や、ボランティアやNPOなど、市民活動に関わる個人や団体と協働したサービスの提供など、質的な変化も起こりつつあります。これらに対応していくためには、本市自らが自己改革を進め、その力量を高めていかなければなりません。そのため、職員には、これまで以上に主体的で積極的な行動と、それを支える能力が必要とされます。
 こうしたなか、本市はまちづくりの基本として「人づくり」を掲げ、時代と社会の要請に対応した個性あるまちづくりの推進に向け、活力のある人づくりについて総合的な方策を検討しています。
 この人づくりは、子供からお年寄りまで、市民一人ひとりの能力を伸ばし、活用できるよう、自治体などがその機会と環境を用意することを指しています。市民の生活や意識の多様性と、自主性を尊重する一方で、地域社会の一員としての役割と責任を自覚してもらい、人と人との連携の中で互いに学び、成長できる条件を整備していくものです。
 具体的には、「国際社会で積極的な役割が果たせる人」「少子高齢化社会で、助け合いながら暮らせる人」「環境問題に関心を持ち、自然や物を大事にする人」「科学技術の進歩に貢献できる人」を重点的に育成するとしています。
 職員が市民の役に立つ人材として育つことが重要であること、職員にはこれまで以上に主体的で積極的な行動と、それを支える能力が必要であること、そして、本市は施策として人づくりを進めていること。
 これらが、本市において人材育成基本方針が必要とされる背景です。

2 人材育成基本方針を策定する目的

企業、自治体を問わず、組織はそれを取りまく環境の中にあります。そして、自治体は、市民のニーズに応えることで存在意義が認められます。自治体の目的は市民福祉の向上であり、自治体と市民の接点は、自治体が提供している施策やサービスです。その集約は「事業戦略」であり、具体的には「総合計画」がこれにあたります。
 本市の「第4次総合計画」は、将来像を「光と緑に映える豊かなまち」とし、計画において目指すまちづくりの目標を「文化の薫る健康福祉都市」と定めています。そして、「個性的で魅力あるまちづくり」「快適でうるおいあるまちづくり」「人にやさしく笑顔あふれるまちづくり」「文化の薫る心豊かなまちづくり」「活力とにぎわいあふれるまちづくり」の五つの柱を基本姿勢として各種施策を展開し、目標の達成と将来像の実現を目指しています。

 次に、総合計画に位置づけられた事業を効果的、効率的に推進するのが「組織戦略」です。この見直しの指針となるのが「行政改革大綱」です。
 本市の「行政改革プラン21~変えます行政市民とともに~」は、「時代要請への柔軟な対応」と「健全で効率的な行財政運営と行政体制の確立」の二つを基本方針としています。そして、「市民、企業、行政の協働化」「情報技術(IT)の積極的な活用」「組織機構、人材の活用」「健全で効率的な行財政運営の推進」「行政評価制度の確立」の五つの柱を重点項目として改革を推進することにより、総合計画が定める将来像の実現を目指しています。
 環境は常に変化を続けており、その変化に対応し続けるために、戦略があります。しかし、その担い手として人材が必要です。環境の変化を認識して、戦略を生み出し、見直していくのは、人材があってこそのことです。
 人材の育成を効果的に進め、職員が持つ可能性や能力を最大限に引き出し、組織全体としての生産性を向上しなければなりません。そして、一人ひとりの職員が意欲と情熱をもって職務に取り組み、市民の役に立つ人材として育つようにしなければなりません。
 これらのことから、育成すべき職員像を明らかにし、長期的、総合的な観点で人材育成を効果的に進めるための指針、すなわち「人材戦略」を自治体として持つことが必要です。
 本市におけるこの人材戦略が、「豊川市人材育成基本方針」です。
 そして、人材育成基本方針は、組織の人材戦略として、次ページの図に掲げるように、事業戦略(総合計画)、組織戦略(行政改革大綱)と相互補完的な役割を果たします。

組織の人材戦略における基本方針の役割

3 人材育成の方向

(1)求められる職員像

本市の人材育成に当たっては、まず、育成すべき職員像(職員にとっての「求められる職員像」)を明らかにする必要があります。この職員像が明らかになっていないと、さまざまな職員像が一人歩きをし、職員は何を目指していいかわからなくなってしまうからです。
 そこで、育成すべき職員像を以下のとおりとしました。これらを定めるにあたっては、「キャッチ・フレーズ」“Catch Phrase”の“C”、顧客満足を意味する言葉として最近脚光を浴びている「カスタマー・サティスファクション」“Customer Satisfaction”の“C”に着目し、頭文字をCで統一しました。これらは、本市の職員として共通に求められる、基本的な意識、姿勢を示すものです。

わたしたちは、「求められる職員像」として“5C”を定めます。

  • 市民感覚あふれる職員 “Citizen Satisfaction”
     市民のために、市民の視点で、市民と共に、市民満足の最大化を目指します。
  • 経営感覚あふれる職員 “Civic Management”
     市政を市経営として捉え、市民ニーズ達成と適正コストの両立を目指します。
  • 笑顔あふれる職員 “Concierge”
     高い品質の市行政サービスを、いつも笑顔でお届けします。

  • 豊川市の魅力をアップする職員 “Charming”
     「豊川市が好き」と言われる魅力あるまちをつくります。

  • 自己変革できる職員 “Change”
     そのために、わたしたちは努力し、変わります。

(2)職員像“5C”を達成するため、各職員が向上させるべき能力、意識、行動

 職員像“5C”を達成するため、職員が向上すべき具体的な能力、意識、行動を各“C”ごとに示すと、以下からのとおりとなります。
 これらの取り組みを、4「人材育成の方策のシステム」に述べるさまざまな方法によって進め、支援することにより、その実現を目指します。
 ただし、その具体的なあり方は一様ではありません。さまざまなかたちの職員像があり得ます。人材育成とは、ひとつのかたちに職員を押し込もうとするものではありません。担当した仕事を円滑、確実に遂行する職員、新しい課題を発見して施策や事業を創り出す職員、困難な事業に努力と忍耐を発揮できる職員、説得や交渉に長けた職員など、職員の長所はさまざまです。そして、それぞれに貴重な人材です。
 人材育成にあたっては、職員一人ひとりの個性を尊重し、その多様性を認めていくことが欠かせません。職員がその個性に基づいて能力を発揮し、組織がその職員を適材適所において活用することが重要です。個々の力が結集して組織全体の総合力として発揮されるようなあり方が望ましいのです。

市民感覚あふれる職員を目指すために、市民との間で建設的なコミュニケーションができる資質を高めます。

1)地域に愛着を持ち、市民と協働し、市民に貢献する意識を高めます。
2)市民から信頼される高い倫理観と使命感を持ちます。
3)折衝・調整能力、説明・説得能力を高めます。
4)男女共同参画社会の実現を意識して行動します。

経営感覚あふれる職員を目指すために、効果的、効率的に事業を実施する職務遂行能力を一層向上します。

1)常にコスト意識を考えて職務を遂行します。
2)職務遂行により達成された成果を分析し、評価します。
3)環境の変化を読みとり、迅速・柔軟に対応します。

笑顔にあふれ、高い品質の市行政サービスを提供する職員を目指すために、職員のモチベーションの向上に努めます。

1)職場の目標・課題について共通認識を持ち、情報を共有し、自分の目標を明確にします。
2)自らが設定した目標の達成を目指し、意欲を持って取り組みます。
3)親切、丁寧で温かい応対ができる接遇能力を養成します。
4)提案や意見が自由に言える、明るく風通しのよい職場をつくります。

豊川市の魅力をアップする職員を目指すために、時代を先取りし、地域の特性を生かした政策を立案、実施できる政策形成能力を強化します。

1)市独自の主体的なまちづくりを行うための企画力を向上します。
2)先見性と独創性を発揮するための、豊かな発想力を養成します。
3)地域の将来像を総合的、中長期的な視野から考えます。

自己変革できる職員を目指すために、自らを人材育成しようとする意識を醸成します。

1)新しい分野に挑戦し、未来を切り開く意欲を養成します。
2)あらゆる機会を捉え、積極的に成長しようとする自己啓発意識を高めます。
3)広い視野を持って問題点や課題に気付く感性を磨き、情報リテラシー(利用能力)を身につけ、時代の流れにあった人材を目指します。

(3)階層別に求められる能力、必要な行動

(2)においては、全ての職員が向上させるべき、具体的な能力、意識、行動などについて述べましたが、市の職員の階層はさまざまです。
 職員像“5C”を達成するためには、階層ごとに重点的に取り組むべき能力、行動を明らかにし、各職員が人材育成基本方針に示したそれぞれの立場を十分に認識して、人材育成を進めていく必要があります。
 そこで、階層別に特に求められる能力、必要な行動について示します。

階層別 求められる能力 必要な行動
部・次長級 政策決定能力
政策評価能力
行政経営能力
組織管理能力
危機管理能力
人材育成能力
 市政の長期的な視点から、それぞれの部門における政策課題を実現するため、進むべき方向性を打ち出します。
 市政全般に対する政策評価と政策論議を行います。
課長級 政策決定能力
人材育成能力
行政経営能力
組織管理能力
危機管理能力
折衝交渉能力
 市政に対する日常の市民ニーズの視点から、課の使命と目的を設定して、組織の総合力を最大限に引き出します。
 課を統括し、政策の実現とその評価を行い、適切に職場を運営します。
 職員の指導育成をリードします。
課長補佐級 業務調整能力
折衝交渉能力
政策立案能力
組織管理能力
危機管理能力
人材育成能力
 課長を補佐し、係長を統括・指導するとともに、課の目標と事業構想に参画し、遂行します。
 対外的な仕事の調整を行い、円滑な遂行を推進します。
 課長と共に、職員を指導育成します。
係長級 政策立案能力
指導育成能力
折衝交渉能力
職務遂行能力
 課の課題に対して、上司の指示を的確に把握し、具体的な政策、施策、事業を企画立案します。
 部下と目指す方向を共有し、指導と育成を行います。
主任級 課題発見能力
職務遂行能力
指導育成能力
 係の方針の中で、課題に対して具体的な政策、施策を提言します。
 係員に実務的な指導を行い、係の仕事の円滑で効率的な推進を図ります。
一般職員 課題発見能力
職務遂行能力
自己開発能力
 組織の一員として、担当する日常の仕事を正確、迅速に推進します。
 問題意識をもって現状から課題を発見し、事務の改善と工夫を行います。

4 人材育成システムの方策

 ここでは、職員像“5C”に基づき、人材育成を効果的、継続的に進めていくための取り組みについて、個別に示していきます。
 人材育成システムのひとつの柱が、直接的な手法としての職員研修であることは言うまでもありません。しかし、研修だけではなく、さまざまな方面から働きかけて、相乗効果を発揮させる必要があります。
 ひとつには、人材育成の手法が効果を上げられるかどうかが、職場の風土や管理職の資質などに大きく影響されるということがあります。このことから、組織風土や人事管理システムについても人材育成を充実させる方向に整備していかなければなりません。
 さらに、人間の能力は意欲と大きく関わっていることから、仕事自体にやりがいを感じないと、能力が発揮されないばかりか、開発や向上への努力も滞ってしまいます。仕事を単に「与えられた仕事」として捉え、義務的に従事するのではなく、「自らの意思で選んだ仕事」として捉え、主体的に遂行していくことが大切です。仕事に対するやりがいは、その内容と自分の価値観との一致点を見い出すことで大きく向上します。この一致点を発見する可能性を高めていくため、これまで気づかなかった新しい仕事の側面を見い出せるようにしなければなりません。
 したがって、今後の人材育成にあたっては、直接的な育成の手法を充実するとともに、さまざまな機会や手段を活かした、総合的な取り組みを進めていくことが必要です。

 そこで、本市では、職員の能力向上に向けた人材育成システムを、以下に示す「充実した職員研修」「適正な人事管理」「組織文化の熟成」の3本の柱により進めていきます。

 これをもって、仕事を進めていく中で、自己啓発を支援し、職員一人ひとりのやる気と人間的な成長をより一層促進し、市民に信頼され、市民と協働する職員を育てていきます。

人材育成システムの3本の柱

(1)充実した職員研修について

 充実した職員研修とは、自己啓発と研修によって、より一層、職員の資質の向上を目指し、その可能性と能力を最大限に引き出すものでなければなりません。
 職員研修は、従来から自己啓発、一般研修、派遣研修の3本の柱により取り組みを進めてきました。この3本の柱について、今後は、各研修相互の連携をさらに深めるとともに、より総合的、能動的な研修体系として整備します。そして、職員に多様な研修機会を与え、意識改革を進めていきます。

職員研修の3本の柱

自己啓発

 自己啓発は能力開発の基本です。自己啓発が十分に行われているかどうかは、人材育成の取り組みが成功するかどうかに大きく関わってきます。
 職員は、仕事でより良い成果を上げるため、必要な知識や能力について認識し、自分の意思により能力の開発に努めなければなりません。これは、職員が仕事の中で自己実現の喜びを味わうための最も効果的な手段となります。
 しかし、職員が、日常の仕事を特段の支障なくこなせるため自己啓発の必要を感じなかったり、決まりきった仕事に埋没したりしていると、そうした取り組みを望むことが難しくなります。そうした際には、自己啓発への刺激と誘因が必要となります。
 また、仕事に必要とされる能力に、直接には結びつかない自己啓発であっても、それによって人間的な向上が図られるのであれば、結果として仕事にも反映され、良い仕事を成し遂げるうえで役に立ちます。
 そこで、自己啓発の促進に向け、次の施策を行っていきます。

1)自己啓発チェックシートの作成と配布
 自己啓発への意欲がどの程度あるかを自分で判定して、自分自身を振り返ることができる自己啓発チェックシートを作成し、定期的に職員に配布します。

2)研究活動(個人・グループ)の支援、研究成果発表会の開催、施策への反映
 職員の先進地視察を制度を設けて実施しています。今後は、これにとどまらず、職員が自主的に行う研究活動に対しても支援を行います。また、研究成果については、やる気を喚起するとともに、情報の共有化を図るため、成果発表の機会を設けていきます。さらに、研究成果が施策に反映できるシステムについても検討していきます。

3)外部教育機関(通信教育など)の利用支援
 通信教育(市が外部教育機関の協力を得て実施している)を修了した職員に、受講料の一定割合の補助を行っています。今後も、こうした自己啓発の機会について、職員のニーズの把握に努めるとともに、職員が利用しやすいように努めていきます。

4)大学や大学院などの受講を支援する制度の検討
 大学、大学院などにおいて、社会人用の受入枠を設けたところが増えてきています。
 自治体に高い専門性を求められる今日、有用な知識や情報を得る機会となります。職員が受講する場合のことを想定し、支援できる制度を検討していきます。

一般研修

 一般研修には、職場において、仕事を通じて行われる職場研修と、人事課が主催する内部研修があります。
 職場研修は、職場の上司や先輩などが、職場内で報告、連絡などの機会を捉え、その仕事に必要な情報や知識、技術、経験などを計画的に教えるものです。職員個人に合わせたきめ細かな個別指導ができることのほか、次の点でも大きな効果が期待できます。

  • 「上司、先輩」と「部下、後輩」の関係が、そのまま「教える人」と「教えられる人」の関係と一致し、指導を通じて互いの理解と信頼が深まること。
  • 特別な経費を必要としないこと。

 ただし、職場研修も万能ではなく、形だけにとらわれて実施されやすかったり、目先の仕事をこなすためだけの指導にとどまりがちであったりするなどの弱点があります。
 内部研修は、同じ環境で働き、同じ目標を持ち、同じ課題を抱えている者を集め、多くの職員に基礎的な知識を体系的に学ばせることができるという点で、効果的な研修です。階層別研修と特別研修に分けることができます。
 階層別研修は、研修対象者を、組織における職務上の階層に分けて実施するものです。それぞれの階層に必要とされる能力や知識を習得させることを目的としています。
 ただし、研修内容が仕事に直接関係しない場合もあり、個々の受講者にとって十分な動機付けを与えることが難しいなどの課題があります。
 特別研修は、特定の課題や能力について重点的に実施するものです。自治体を取り巻く環境の変化に対応して、必要となった特定の課題や能力の育成に適しています。
 この課題としては、環境の変化が激しいため、必要に応じて研修の内容を再編し続けなければ、時代の要請に応えられないことがあります。
 一般研修のそれぞれについて、課題を踏まえつつ、その長所が最大限に発揮され、効果を上げることができるよう、次の施策を行っていきます。

1)職場研修マニュアルの作成
 職場研修マニュアルを作成し、職場の管理職員に提供し、職場研修の活性化を図ります。マニュアルの内容は次のとおりです。

  • 職場や職員のタイプ別に職場研修のあり方を示す。
  • 職場研修の責任者は管理職員であること、管理監督という概念には、部下の指導と育成という教育的要素も含まれていることを明らかにする。

2)職場研修指導者の養成
 職場研修を各職場で進めていくために、各職場に職場研修指導者を設置し、推進体制を整備していきます。職場研修の実質的な主体は係であることから、係長級の職員をじかに指導できる課長補佐級職員を職場研修指導者として養成します。

3)希望制、選択制研修の充実
 研修を「受けさせられている」という意識で受講していては、研修の効果が十分に上がりません。そこで、特別研修においては、公募枠を設け、希望する職員が受講できるようにしています。今後も、職員のやる気を引き出すため、こうした希望制の研修を充実していきます。
 また、階層別研修については、科目の一部を選択制としたり、職種によって内容を変更するなど、受講者の主体性やニーズを考慮した編成となるよう検討していきます。

4)政策形成能力、企画力向上研修の充実
 全国画一の地域政策ではなく、特色ある地域づくりが求められている中では、さまざまな政策や企画を考え得る能力を備える必要があります。
 問題は、どんな立派な政策でも、サービスを受ける市民にとっては、現実にそのサービスによって恩恵を受けなければ意味がないということです。長期的な視野で、実行能力に満ちた政策形成能力や企画力を向上させる研修に力を注いでいきます。

5)公務員倫理研修の充実
 市民に信頼される職員となるために、公務員としてのモラル(倫理観)を守ることはもちろんのこと、組織と職場のモラール(士気、風紀)を高め、意欲的に仕事にあたらねばなりません。そこで、公務員倫理の研修について、その機会を拡充していきます。

6)市民応対研修の充実
 親切、丁寧で温かい対応や、折衝や調整、説明、説得に必要となる能力は、市民との応対に際して欠かせないものです。現在、接遇研修や住民対応力強化研修を行っていますが、今後も、研修の科目は市民応対能力の育成を重視して編成していきます。

7)研修のフォローアップの実施
 研修による能力の向上を確実なものにするためには、研修を受けっ放しとすることなく、そのフォローアップ(事後研修)を行わなければなりません。
 具体的なフォローアップの方法としては、次のものがあります。

  • 研修の成果を職場で実践した後に、その内容を確認する研修の実施
  • 研修後の行動計画の作成
  • 所属長による対面指導
  • 研修報告の職場内実施

 研修は自らの能力不足や能力開発ニーズ発見する場でもあり、研修を受けたということは、新たな資質の向上に向けての挑戦の始まりでもあります。そこで、個々の研修の形態に応じたフォローアップを充実していきます。

8)法律、パソコンなどの知識と技術の養成
 ものごとを法的な面から捉える能力や法制執務に関する知識は、全ての職員に求められるものです。とりわけ、自律性を持った自治体となるためには、新たな政策立案に伴う条例や規則などを整備する政策法務能力が欠かせないものとなっています。
 また、情報通信技術が飛躍的な発展を続ける中、国もあらゆる行政手続きの電子化を盛り込んだ情報化対応の方針(e-japan戦略)を打ち出しています。自治体にとっても情報化は重要な課題であり、情報化に対応する能力が強く求められています。
 こうした課題に対応するため、法律、パソコンなどの知識と技術を養成する研修を今後も継続していきます。さらに、単に知識や操作技術を教えるだけではなく、さまざまな視点から課題を捉え、職員の意識の変革を図ることができるよう、研修の内容を充実していきます。

9)研修効果の測定手法の検討
 研修効果の測定については、具体的で短期的な目標を達成する研修については比較的容易です。しかし、長期的な視点に立った研修については、研修の終了直後にその効果が表れるものではないため、難しい面があります。
 しかし、時代に応じた研修内容の再編のために、客観的に研修の効果を確認できる仕組みが必要ですので、その構築を検討していきます。
 また、研修アンケートなどについては、現在の感想文的な要素も踏まえつつ、受講者が数値的な評価をできるものに整備していきます。

10)個人別研修計画の作成の検討
 個人別研修計画は、職員が自らの意志で、自らの育成計画を作成するものです。
 いつ頃、どのような研修を受けるか、またどのような自己啓発をするかを、職員個人の適性、知識などの成熟度、仕事の内容などと照らし合わせながら、本人が明らかにし、自身の研修計画を育成計画として完成させます。これにより、研修に主体的に参加し、研修が自己実現の場となります。
 こうした制度が導入できるよう、検討を進めていきます。

派遣研修

 派遣研修は、一定期間、職場を離れて行われることから集中的に実施することができます。また、内容的にも、受講者それぞれの立場に応じた知識や技術を体系的に学ぶことが可能です。それだけにとどまらず、他自治体の先進事例を学んだり、民間の視点から自治体を捉え、経営手法を学んだりすることで、幅広い視野を得ることができます。
 さらに、組織外の人々と共に学んで意見を交換したり、異なる環境に身を置いてさまざまな体験をしたりすることは、新たな知識の獲得と人間的なネットワークの拡大を受講者にもたらします。そして、受講者が自分を客観化し、自分を知る絶好の機会となり、次の育成段階への貴重なステップとなります。
 派遣研修の有効性は以上のとおりですが、できるだけ多くの職員が機会を得られるようにすること、受講者にはしっかりとした動機付けの必要があることなどの配慮が必要とされます。
 そこで、次のように、従来の枠組みに必要な改善を加え、施策を行っていきます。

1)自治大学校や市町村アカデミーなどの専門的研修機関への派遣
 自治体独自の研修では、必ずしも十分な対応が難しい高度、専門的な研修を実施している機関としては、自治大学校や市町村アカデミーなどがあります。
 自治大学校は、長期間の研修期間を設定し、政策形成能力や行政管理能力の養成といった高度な研修を実施しています。
 市町村アカデミーは、専門実務から政策課題まで、幅広い研修を実施しています。
 このような研修機関は、環境の変化に対応し、常に研修内容の見直しを行ってその改善と充実に努めており、最新の知識、情報を一流の講師陣が提供するため、たいへん効果的な研修です。今後も派遣を継続し、より多くの職員がこの機会を得られるように努めていきます。

2)民間企業などへの派遣
 民間企業などは、公務とは異なった組織原理に基づいて運営されています。そこへ職員を派遣することで、民間の経営感覚やコスト意識、幅広い知識を習得し、意識改革を図ることができます。
 現在、豊川商工会議所を対象として職員を派遣していますが、民間企業、金融機関、シンクタンクなどについても派遣を検討していきます。
 また、現在は派遣期間を1年間としていますが、数ヶ月から半年間の派遣形態についても検討していきます。

3)国や県への派遣
 愛知県の市町村職員実務研修生制度を利用し、毎年、職員を県に派遣しています。
 これは、県域全体の中で自らの市町村の位置づけや、他の市町村の状況など、一つの自治体の中からではなかなか捉えることのできない広域的課題を理解し、幅広い視野を養うことを目的としています。
 今後も県への派遣は継続するとともに、より広い視野を養う機会とするため、国への派遣についても検討していきます。

4)他市町村との共同研修 
 他市町村との共同研修は、広域的な交流による相互啓発の機会となります。さらに、研修で知り合った者同士で人間的なネットワークを形成できるばかりでなく、市町村間の連携をより深める機会ともなります。
 現在、豊橋市、蒲郡市、新城市、宝飯郡4町と共同研修を行っていますが、今後もこれを継続しつつ、機会の拡大を図っていきます。

5)公募型研修の拡充
 職員の主体性を重視した研修受講の機会とするため、派遣研修についても公募型の研修を拡充していきます。

6)他市町村との人事交流の検討
 他市町村との人事交流は、互いに職員を派遣し合い、それぞれが互いの自治体で行われている先進事例を実地で学んだり、異なる視点で地域の自治体をとらえて幅広い視野を養ったりするものです。
 本市においては実績がないので、制度のあり方について検討しつつ、人事交流の趣旨と目的に合った交流先を選定していきます。

(2)適正な人事管理について

 人事管理のさまざまなシステムは、本来、職員の意欲や能力を引き出すためのものです。したがって、職員の採用から、異動、昇任、評価にいたるすべての面において、職員の能力開発や人材育成と適正に連携されているかどうかを、常に見直す必要があります。
 そこで、適正な人事管理について、次の3本の柱から進めていきます。

  • 職員採用の観点から考える「人材確保」
  • 職員の育成を異動、配置の観点から考える「人材活用」
  • 職員を適正に評価することによりモチベーション(動機、刺激)を高める観点から考える「人材評価」

人事管理の3本の柱

人材確保

職員の採用は、人材育成と密接な関わりがあります。それは、職員としての出発点において、できるだけ優れた資質の者を確保すれば、人材として育てることが容易となるからです。
 また、人材育成に力を注ぎ、人を引きつける、魅力ある職場をつくる必要があるという意味においても、採用と育成は互いにその前提になる関係にあります。
 雇用市場の流動化が進む中で、さまざまな面で優れた人材を確保すべき職員採用にあたっては、競争試験による採用を原則としつつ、計画的、効果的な採用を行っていく必要があります。
 情熱と向上心を持ち、市民との協働意識の高い人材を確保するため、次の施策を行っていきます。

1)志願者への職員像“5C”の明示
 職員採用候補者試験の実施にあたっては、今後、この人材育成基本方針が示す職員像“5C”を明らかにし、志願者はそれを踏まえたうえで受験をするようにしていきます。これにより、新規採用者が採用当初から職員像を共有することができます。
 また、示した職員像に共感し、本市職員を目指そうとする者を掘り起こす効果も期待できます。

2)人物重視の採用試験の実施
 合格者の画一化を避け、知識のみに偏らない、さまざまな面で優れた人材を確保するために、採用試験では面接に重点を置いています。
 今後も、職員像“5C”の実現を目指し、より一層人間性を重視した採用試験のあり方を工夫していきます。

3)民間経験者の採用
 専門分野における人材の育成については、従来から内部的に進めてきました。しかし、内部で育成するには時間がかかることと、先進的、あるいは迅速な対応を進めることが困難な新しい分野やテーマがあることから、必要な人材をどう確保するかという課題があります。
 そこで、平成14年度に民間経験者を対象とした採用試験を実施し、3名を採用しました。今後も必要に応じ、こうした採用試験を実施して必要な人材を確保していきます。

4)受験者数の確保
 採用試験の受験者数がそのまま採用者の質を決定するものではありません。しかし、多くの受験者が集まれば、その中により良い資質を持った者がいることは十分に考えられます。そのため、より多くの受験者を確保していく必要があります。
 現在、広報活動や、採用試験要綱の各学校機関への配布、ホームページへの掲載を行っていますが、今後もさらに工夫を凝らしていきます。

人材活用

 人材活用は、主に職員の異動や配置により、組織の人材が持つ力を最大限に発揮させるものです。さらに、職員個人の現有能力を有効に活かすとともに、潜在的能力を発見して育成する目的もあります。
 職場での仕事の体験は、「人は仕事を通じて育つ」と言われるように、主要な能力開発の機会です。特に、専門的な知識や技術は、実際の仕事を通じてでなければ本当に身に付くものではありません。
 職員の育成の観点から、この機会を計画的に作り出すことにより、能力を多面的に開発し、向上させることができます。
 これらのことを踏まえ、次の施策を行っていきます。

1)育成のためのジョブ・ローテーションの実施
 ジョブ・ローテーションとは、職員の仕事を計画的に交替させ、多くの仕事を経験させる育成方法です。職員の配置にあたっては、新規採用時から一定の期間内に、管理部門、窓口部門、事業部門の3分野の仕事のいずれをも経験させることを基本としています。
 若いうちに幅広い知識、経験を身につけ、できる限り市全般にわたる視野を身につけることは、人材育成の観点からとても重要なことです。
 職務上の都合と、ジョブ・ローテーションの考えとの調整が困難な場合も少なくありませんが、その仕組みを明確なものとし、それをすべての職員が認識する中で、より効果を発揮するものとしていきます。

2)職員自身によるキャリアプランの作成
 ジョブ・ローテーションにも関わりますが、採用後、いくつかの仕事を体験した職員は、自分の適性や志向を把握することができます。職場は職員にとって自己実現の場でもありますので、把握したものをよりどころとして、自己実現の道を開くことができます。そして、主体的に自分を育成する点で大きな効果を発揮します。
 そこで、職員が、いくつかの仕事を体験した後、目指す方向がゼネラリスト(万能型)かスペシャリスト(専門型)かを決めさせます。そして、そのために今後の経歴をどうしたいかを自分で考え、キャリアプラン(今後の経歴についての計画)を作成していく制度を構築していきます。その後の配置は、作成された計画を反映しつつ行います。
 なお、キャリアプランについては、一定期間ごとに職員が見直す機会を与えます。
 また、一般行政職の技術職員については、市全体にわたる視野をさらに養成していくため、職域を拡大し、一般事務の部署への配置についても検討していきます。

3)特定の職務に精通した職員の養成
 行政のさまざまな分野において、専門的能力を持つ職員の育成が重要な課題となっています。しかし、現在の人事管理は、幅広い職務分野を担い得る職員の養成を主眼としており、必ずしも特定の職務分野に精通した職員を計画的に育成していく仕組みになっていません。
 そこで、キャリアプランにおいてスペシャリストを目指し、適性もある職員に対しては、特定の職場を中心に配属し、本人の得意な分野へ専念させることで、特定の職務に精通した職員の養成を図っていきます。

4)特定職場やプロジェクト・チームへの庁内公募制度の実施
 特定の職場への異動や、プロジェクト・チームへの参加について職員から希望を取り、申し出のあった職員の中から審査、選考を行ったうえで実際に配属する制度です。
 組織の活性化と、職員の意欲の向上、能力の有効な活用といった面で効果があります。
 本市では、平成13年度に生活活性課を新設した際に行いましたが、今後も機会を捉えて実施していきます。

5)女性職員の登用と職域の拡大
 男女共同参画社会の実現に向け、組織内においてもジェンダーフリー(性別にとらわれず行動すること)の意識を全ての職員が持たなければなりません。
 かつては女性職員に対して体力的状況などを配慮し、仕事が過重、不規則にならないようにしていた傾向がありました。こうした配慮は、一見女性を保護しているようですが、実際には職業人としての女性の職域を狭めていることになり、結果として女性の能力発揮を妨げる一因となります。
 したがって、成長意欲と能力発揮を促進する観点から、採用、配置、昇格にあたっては、性別に関わらず、個人の力量と適性を考慮して行います。

人材評価

 職員に対する評価は、仕事への動機づけに関して大きな役割を果たすものです。
 職員数と財源に制約が加わってくる中で、複雑多様化する市民ニーズに的確に応えていかなくてはなりません。そのためには、職員の仕事へのインセンティブ(奨励)を高め、これをもって職員の意欲を向上させ、能力が最大限に活用されるようにしていく必要があります。
 その前提として、評価の仕組みを整備することが不可欠です。
 また、仕組みを運用するうえで、職員一人ひとりの能力と実績が正しく反映された評価を行っていくためには、職員一人ひとりに対して、それぞれの仕事内容、要求される能力、果たすべき役割を明らかにしなければなりません。何をすべきか明らかでない状態で、職員に成果を望んでも、それを評価することはできません。
 仕組みを整備し、透明性の高い、公平で的確な人材評価の運用を行って、初めて効果を発揮するという点で、人材評価には特に慎重な配慮が要求されます。
 これらのことを踏まえ、次の施策を行っていきます。

1)目標管理制度の導入
 目標管理制度は、上司と部下が面談を行い、組織の目標と個人の目標を統合して設定した目標をマネジメントサイクル(下図参照)に沿って実行していく制度です。
 実施後の評価も上司と部下の面談により行い、その結果は次期の目標と計画に反映します。
 事務事業を効率的、効果的に進めることができると同時に、職員の意欲を向上し、創意工夫を促し、自己管理を向上させることができます。
 また、上司と部下とが面談して目標を設定するので、次の効果も期待できます。

  • 仕事への参画意識が高まる。
  • 職員が組織の目標を明確に意識することができる。
  • 仕事を通じてコミュニケーションが図られる。
  • 情報を共有できる。

マネジメントサイクルのイメージ図

2)挑戦的な仕事の遂行や積極的な自己啓発に取り組む職員の評価
 与えられた仕事に対する勤務実績を評価するだけではなく、職員が設定した目標に対し、どれだけ挑戦し、努力し、成果を上げたかという点を評価に反映させていきます。これにより、職員の挑戦意欲を高め、積極的な仕事への取り組みを促します。

3)勤務評定結果のフィードバック
 勤務評定は、評定で明らかになった、職員に求められる能力を向上させるための制度です。したがって、評定結果を被評定者へフィードバック(還元)することが非常に重要です。これを制度として位置づけ、確実に行われるようにしていきます。
 具体的には、最終評定者が面談を行い、評価した点、努力を求める点などを明らかにして伝えるとともに、面談後は職員の能力の向上を支援する方法で行います。
 これにより、勤務評定の基準についても、評定を受ける職員に示すことができます。

4)勤務評定者訓練の充実
 勤務評定においては、客観的で公平な視点で行わなければなりません。しかし、あくまでも評価するのは人間ですので、適正な評定ができるように訓練をする必要があります。
 現在、係長級に昇格した際と、課長補佐級に昇格した際に勤務評定者訓練を行っています。今後もこれを継続するとともに、勤務評定時に評定再確認シートを配布するなどし、適正な評価の推進を図ります。

5)自己申告による降格制度の活用
 希望降格制度は、職員が、本人やその家族が病気となったり、ポストに対して能力に不安を抱いたりした場合に対応するため、職員自身が降格を申し出る制度です。
 本市では、課長補佐職以上の職員を対象としてすでに実施しています。職員に仕事上、極度の無理を強いることなく、その能力を的確に活かすために有効な制度ですので、今後も継続していきます。また、係長級職員まで対象範囲を広げるかどうかについて検討をしていきます。

6)公務員制度改革大綱への対応
 平成13年12月に閣議決定された公務員制度改革大綱においては、能力評価と業績評価からなる新しい評価制度を導入し、給与処遇に反映するとしています。
 大綱に基づく地方公務員法などの改正は、数年のうちに実施されることが予想されます。法改正の動向を踏まえつつ、本市にとって最適な対応ができるようよう検討していきます。

7)多面的人材評価導入の検討
 上司が部下を評価する評定制度に加え、例えば部下が上司を、あるいは同僚が同僚を評価する多面的人材評価制度の導入を検討していきます。多面的人材評価には、従来の評定を補うものとして、より客観性の高い人材評価に役立つだけでなく、より良い仕事の遂行を互いに確認し合う機会を生み出す効果があります。

(3)組織文化の熟成について

 人材育成を進めるためには、職員研修や人事管理などの手法を充実するだけでなく、その土台となる組織文化の熟成が欠かせません。
 日常の仕事の中で、市民が何を期待しているかを敏感に察知して、それに応えられる組織である必要があります。
 さらに、市民活動やコミュニティ活動にとどまらず、行政への市民参加の流れが加速度的に進む中では、組織として協働型行政を進めるとともに、職員自らも一人の市民としての立場で関わっていく必要があります。
 そして、何より職員は、自分の所属する部署の職員である前に、本市の職員であるという自覚を持たなければなりません。個々の職員の能力と意欲を、組織の力として最大限に発揮していくため、職場内や関係する職場にとどまることなく、組織全体におけるスムーズな調整を図っていく必要があります。
 また、職員が心身ともに健康で働ける環境についても配慮することも重要です。
 これらの点を踏まえ、以下の3つの柱から取り組んでいきます。

組織文化の熟成における3本の柱

市民主体

 自治体が、納税者である市民からの期待に基づいて市民サービスを向上させていくものである以上、市民満足を追求する組織体でなければ、市民にとって存在の意味がありません。
 市民サービスを商品として捉えれば、生産者(市役所)から、消費者(市民)への商品の流れを方向付けるニーズの把握こそが重要なものとなります。消費者が求める安くて良い品(内容が充実していて効率よく行われる市民サービス)を、いかに作るか、どのような形で提供し、普及させていくかといった視点が取り入れられなければなりません。
 そのために、職員は市民主体の考えに立って仕事を遂行する必要があります。いわば、現場主義の徹底が求められているということです。
 市民サービスの提供者として、コスト意識などの経営感覚を磨き、市民満足度の高い行政サービスを提供できるよう、市民主体の意識の徹底を図るため、次の施策を行っていきます。

1)市民満足度アンケートの実施
 職員への評価をいただきやすい環境を作ります。具体的には、飲食店や喫茶店に置いてある「従業員の応対はいかがでしたか」といったアンケート用紙を作成して、投函箱と共に各所属に設置する方法で行います。
 これにより、市民の立場を考えた応対と意識を徹底し、市民満足度を高めます。
 なお、すでに秘書課が所管して実施している「市民何でも意見箱」と重複する部分については、調整を行っていきます。

2)コスト意識の徹底
 自治体の仕事は、市民の税金を中心にまかなわれています。市民はコストパフォーマンス(商品の価値と価格とのつり合い)に優れたサービスを求めていますので、その求めに応じた仕事を職員はしなければなりません。
 あらゆる事務、事業を行う際に、その直接的な費用だけでなく、ランニングコストや従事する職員の人件費など、関連する全ての費用を意識する必要があります。そして、より効率良く、より迅速にサービスを提供しなければなりません。
 こうした面から、管理職員が部下を指導するよう進めるとともに、職員一人ひとりが意識できる仕組みを検討していきます。

3)事務改善提案制度の推進
 事務改善の提案については、すでに制度化されており一定の成果が上がっています。
 これを市民主体の考えに立ってさらに進め、職員の多彩な発想を促すことにより、職員の資質の向上と事務の効率化を図ります。

4)市民への出前講座の推進
 出前講座は、市民の求めに応じて職員が出向き、仕事の内容などについて直接住民に説明するものです。理解と協力を求めることを通し、職員の対人能力、プレゼンテーション能力を高め、市民主体の考え方を養成することができます。現在、生涯学習課においてこの集約を行っていますが、人事課も連携し、より多くの職員が市民の前で講師を務める機会を得られるようにしていきます。

市民協働

 市民の力が発揮できる仕組みをつくり、市民と自治体とがそれぞれの役割を分担しながら、課題の解決と特色あるまちづくりを行わなければならない時代になっています。
 市民参加の流れは定着しつつあります。市民は、課題の発見や解決を通して自らの意向を行政に反映することを体験し、協働に向けての意識が旺盛になってきています。
 地域社会との連帯感を作り出す交流を図り、職員が一人でも多くの市民とネットワークを形成することを進め、地域活動や社会貢献活動に対する意識を高めます。また、協働の気運がさらに高まることから、職員が一人の市民としても活動に参加していくことを進めていきます。
 そこで、次の施策を行っていきます。

1)市民と自治体が協働するためのネットワークづくりの推進
 市民も自治体も、協働することでさまざまな経験を通し、成熟していきます。そして、地域社会に連帯感が生まれます。
 また、職員にとっては、多くの市民から意見や提案を聞くことで、知識が増し、視野が広がり、資質の向上につながります。
 協働の機会が多ければ多いほど、市民、自治体の双方にとってメリットは大きくなります。
 右の表は、市民と自治体の協働の例をいくつかまとめたものです。協働が可能となる分野は非常に多く、思ってもいなかった協働の事例が生まれることも考えられます。
 こうしたことから、職員一人ひとりが自分の仕事を振り返ることが求められます。より良いサービスを提供するために市民と協働できる部分があるか、あるならばどのように協働していくかということを考え、常に模索する必要があります。
 本市の組織における市民との協働については、生活活性課が主管課となっていますが、人事課としても人材育成の観点から連携し、協働のためのネットワークづくりを推進していきます。

市民と行政との協働の例
分野 具体的な協働の事例
保健・福祉・医療 お年寄りや障害者の介護、難病者の支援、お年寄りへの給食サービス、アルコールや薬物依存者へのケア、共同作業所の支援、お年寄りや障害者の移動サービス、聴覚障害者への点字・手話・声のボランティア、自立生活や作業所の支援、障害児保育、病気の予防グループ、救急医療の普及
社会教育 学童保育、不登校児教育、生涯学習ボランティア、高齢者大学の運営、講座などの自主的な開催
まちづくり ワークショップによるまちづくり、歴史的建造物の保存、地域おこし、情報誌の発行、清掃活動、花いっぱい運動、農業体験、コミュニティづくり、地域産業の活性化、観光ボランティア
文化・芸術・スポーツ 民間博物館、スポーツイベントの支援、伝統文化の継承、美術館解説ボランティア、市民オーケストラ、スポーツ教室、スポーツ指導、演劇などの鑑賞会
自然・環境保全 森林保全、河川の浄化、再生紙利用、ゴミの減量化、地球温暖化の防止、公害防止、過剰包装削減、
使い捨て容器の使用自粛、マイバッグ推進、フリーマーケット
災害救助、地域安全 災害時の救助や救援、被災者への支援、災害の予防、交通安全啓蒙、犯罪の防止、犯罪者の社会復帰支援
人権擁護、国際協力 差別撤廃、子供の虐待防止、家庭内暴力からの保護、ホームレスの生活支援、国際交流活動、留学生支援、通訳ボランティア
男女共同参画社会形成、子供の健全育成 男女共同参画、セクシュアル・ハラスメント防止、家庭内暴力防止、遊びの伝承、非行防止、本の読み聞かせ、不登校児の親の援助、いじめ対策、託児所、地域の子ども会、地域の子育て支援、学童保育、グループ保育
市民活動支援 市民活動サポート、市民活動への助成、ボランティアセンター設置、市民団体の立法支援、企業・自治体への市民活動の紹介、市民活動への情報提供

2)職員が仕事を離れて市民活動に参加することへの推進と支援
 職員は仕事を離れれば一人の市民です。その立場から市民活動に参加したり、自治体と協働したりすることで、市民主体の意識を向上したり、自治体の立場では見えなかった課題や、新たな問題解決の手法を発見したりすることができます。
 さらに、より多くの市民とネットワークを形成できる、強い信頼関係が結ばれる、職員の成長を促すなど、将来にわたってその職員の、ひいては自治体全体の財産となる効果も考えられます。
 そこで、職員が市民活動に参加することを進めていきます。その支援として、職員それぞれの参加意識が高まる「きっかけ」を与える、管理職の指導の下、職場として参加しやすい雰囲気をつくるなどの方策を行っていきます。

3)市民とともに学び合う学習会の開催の検討
 市民の生活に重要な影響がある新しい施策を実施する場合、各地区に職員が入っていき、住民説明会を行うことがあります。また、市民からの行政全般についての要望や疑問に答える機会として、連区と町内会が主催する「市長を囲む会」があります。
 しかし、ざっくばらんに職員と市民とが意見交換し、学び合うような機会というと、多くはありません。
 こうした機会を増やすことができれば、職員と市民との間の風通しが良くなり、互いの立場を認識することができ、資質を高め合うことができます。そこで、職階や年齢、性別にとらわれずに、全ての職員がその機会を得られるような学習会の開催を検討していきます。
 また、職員研修においては、講演会形式や、職員が研究成果を発表する形式のものであれば、容易に市民が参加できます。これも市民とともに学び合う機会ですので、こうした機会を設けることも検討していきます。

組織づくり

 自治体は人によって成り立つサービス業であり、人に投資しなければサービス業は発展しません。優れた人材の育成を効率的に行えるかどうかは、その組織における、人を育てる環境と風土にかかっています。職員に自分を育てようとする意欲があり、成長の機会を得ようと思っても、組織や職場にそれを言い出しにくい雰囲気が漂っていては人材育成はできません。
 職員は自己実現への要望を持っています。自己実現は、大きな成長を促します。その要望を汲み取り、援助していくことが必要です。
 ただし、職員にはそれぞれに多様性があります。適性、個性、特性などの多様性を十分に活かして、初めて自己実現が可能になることを忘れてはなりません。
 そして、組織の目標を全ての職員が共有しながら、職員の発想や提案が速やかに組織全体に伝わり、施策に反映されていくような体制が望まれます。

1)職員が意欲的に仕事に取り組める職場環境の整備
 職員の仕事への意欲は、その自己実現への要望と重なった時に大きく高まります。
 こうした要望を汲み取り、側面から援助していかなければなりません。
 そのため、管理職員は、日常的に職員との接触を図るなど対話の機会を持つことが重要です。これにより、仕事に限らず、職員一人ひとりの意向を確認したり、知識や技術を高めようとする気持ちに応えたりすることができます。
 そこで、自由な意思疎通のできる職場環境づくりに努めるとともに、管理職員がその重要性を認識する機会を設けていきます。

2)組織目標、行政情報の共有化
 組織全体の目標は、組織のすみずみまで行き渡っていなければならなものです。また、「なぜ、その目標なのか」ということ、つまり目標と対になる情報が共に行き渡る必要もあります。
 こうしたことがない場合、職員は単に仕事をやらされていると感じるだけで、士気が上がることはありません。さらには、課や係の中で情報の共有化が図られないがゆえの「縦割りの弊害」の発生すら予想できます。
 そこで、組織目標や情報の浸透が図られる機会として、各所属における課内会議や、係内ミーティングが定期的に開かれるよう働きかけていきます。

3)学習的職場風土の醸成
 職場の体質や雰囲気は、職員の育成に大きな影響を及ぼすものです。職員が協力し合って能力の向上に努めたり、自己啓発への取り組みを支援したりすることができる職場風土の醸成が重要です。
 そのため、管理職員が、こうした学習的職場風土づくりに率先して取り組んでいくことが必要です。また、職員一人ひとりが、職場の中に相互啓発的な雰囲気を作り上げるよう意識的に努力する必要があります。
 ただし、各職場にどの程度の学習的な風土があるかは、判断しにくい面があります。
 そこで、職場風土の診断表を配布して、管理職員が現在の状況を把握できるようにしていきます。その後、その結果をもとに不足する部分を補っていきます。

4)職員提案制度の充実
 「市民主体」で述べた事務改善提案制度は、所属の枠を越えて改善の提案をしていくものですが、職員提案制度は、所属内における仕事の改善を提案するものです。
 職場には、それぞれに長い時間をかけて形成された価値観があり、異動で人が変わっても前例踏襲になりがちです。その結果、職場における仕事を改善する速度は緩やかなものとなってしまいます。
 そこで、所属職員全員が参加し、定期的に仕事改善の提案を行う制度を設けます。
 これにより、職員の問題意識や学習意欲の向上と、職場の活性化を図っていきます。

5)メンタルヘルスの推進
 職員が心身ともに健康で働ける環境をつくることは、仕事を遂行する面でも人材育成の面でも前提となる、重要なことです。これまでも、職員の定期健康診断や人間ドックを実施し、再検査を必要とする診断結果が出た職員には必ず再検査をしてもらうよう指導してきました。
 しかし、最近は精神面での病気により、職員が長期療養となる事例が増えてきています。そこで、メンタルヘルスの面からの職場診断や、職員に対するメンタルヘルス教育を強化することにより、対策を図っていきます。
 また、いわゆる心の病にまで至らずとも、仕事、人間関係、家庭などにおける悩みを持つ職員がいることも考えられます。こうした悩みが深刻なものとならないよう、次の方策を検討していきます。

  • 職場の管理職員が適切に対応できるようにする。
  • 職員が安心して気楽に相談できる窓口を設ける。

5 人材育成推進体制

 人材の育成を進めていくためには、部課にとらわれず全庁一丸となった体制と、全ての職員が自分の立場と役割を自覚した、主体的な取り組みが必要不可欠です。
 このため、次のとおり推進体制を整備するとともに、職員それぞれの立場と役割を明らかにします。

組織の責務(人材育成推進委員会の設置)

 人材の育成を着実に推進するためには、全庁的な取り組みが確保できる体制が必要です。

1)各所属は、それぞれの職場で、または職場の垣根を越えて、学習的職場風土づくりを進めなければなりません。

  • 仕事のうえで必要となる研修を実施する。
  • プロジェクト・チームを作って職員に課題を検討させる。
  • 自主的な勉強会を奨励する。
  • 図書や資料の整備を行う。

2)人事課は、人材育成を進める事務局として、各所属が実施する人材育成や、職員一人ひとりの取り組みが効果的に行われるように支援していかなければなりません。

  • 人事システム全体を人材育成の面から充実し、適切に運用する。
  • 時代環境や職場のニーズに絶えず注意を払い、課題に対応した効果的な研修を企画し、実施する。
  • 自己啓発とOJTの推進に重点的に取り組む。

3)「豊川市人材育成推進委員会」を設置します。この委員会は、各所属と人事課が、または各所属同士が連携を取りながら、職員の能力の向上を進める企画、調整の場となります。
 また、人材育成基本方針の執行管理を同時に実施し、必要に応じて方針の見直しを行う機能を持たせます。

管理職員の責務

 管理職員は、人材の育成を進めるうえで、自分の役割の重要性を十分に認識します。
 そして、公私にわたって常に部下の成長を意識し、効果的な手法を考えながら育成に取り組みます。同時に、よりよい組織文化づくりに向け、十分な配慮を行ないます。
1)市政の理念や組織運営方針を、身をもって示さなければなりません。
2)自己研鑽に努め、自らの能力の開発と向上を図り、強い信念と自覚を持った行動を取らなければなりません。
3)職員の育成は、管理職員の職責であることを認識し、あらゆる機会(仕事上の指示、指導、ミーティング、検討会、勉強会、読書会、意見交換会などが考えられます)を通じ、計画的に実施しなければなりません。
4)職場外における研修についても、その目的を十分に理解し、研修のフォローや事後指導、開発した能力の有効活用を行わなければなりません。

職員の責務

 職員は、人材育成の成否が、職員の主体的な自己啓発のあり方を大きく左右することを十分に認識します。
 常に、学ぶ意欲と問題意識をもって仕事に取り組むとともに、積極的に、よりよい組織文化の熟成を進めます。
1)担当する仕事の適切な執行と、自らの能力開発のための計画づくりを行わなければなりません。
2)職場外研修に積極的に参加するとともに、上司などが行う職場研修の機会を進んで求めなければなりません。
3)開発した能力を、創意工夫しながら有効に活かさなければなりません。
4)担当する仕事に積極的な意欲と関心を持って取り組み、常に自己の能力を開発するため、研究、調査、改善、改革などを心がけ、質的な向上に努めなければなりません。

資料編 1 人材育成についての職員意識調査

人材育成についての職員意識調査は、その結果を人材育成基本方針策定に向けたワーキング活動の基礎資料とするために行いました。
 その内容と調査結果については、次のとおりです。

1 実施時期

 平成14年8月6日~8月21日

2 対象者

 行政職給料表と企業職給料表の適用職員。
 対象職員986人中、928人が回答(回収率は94.12%)。

3 意識調査の内容

問1 回答者自身について
(1)性別(2)年齢層(3)職種(4)階層
問2 職場の特性(各設問について回答者が4段階で評価)
(1) 将来を見越して目標・計画を立てているか。
(2) 仕事の担当・責任の範囲を明確にしているか。
(3) 仕事を進める上での手本となる職員がいるか。
(4) 職員が役割を認識しているか。
(5) 職員がやりがいを感じているか。
(6) 職員同士が信頼しあっていると感じるか。
(7) 職員同士が力を合わせて仕事を進めているか。
(8) 将来の課題に向けて仕事の結果を検討しているか。
(9) 新しいアイディアを積極的に試そうとしているか。
(10) 意思決定の場面に職員を参加させているか。
(11) 将来必要となる知識・能力の教育に力を入れているか。
(12) 管理・監督者が職員に対して直接的に指導しているか。
(13) 職員が先輩に対して相談しているか。
(14) 上司が組織の戦略や方針を伝えているか。
(15) 個人の取り組むべき目標が明確になっているか。
(16) 業務の進行管理がうまく行われているか。
(17) 仕事の成果について確認する機会を設けているか。
(18) 女性や若手職員が実力を発揮できる雰囲気があるか。

問3 個人能力の特性(各設問について回答者が4段階で評価)
(1) 与えられた仕事は最後までやり遂げているか。
(2) 何事も迅速にきちんと処理することができるか。
(3) 自分の努力によって、仕事などの成果が決まると考えているか。
(4) 仕事のポイントを的確につかんでいるか。
(5) 新聞・雑誌・テレビなどの情報に積極的に目を向けているか。
(6) 誰とでも気軽に話ができるか。
(7) 仕事に関して相談できる人がいるか。
(8) 自分の意見をきちんと主張できているか。
(9) 自分の仕事にやりがいを感じているか。
(10) 組織の戦略・方針を理解しているか。
(11) 自分の能力向上のために努力をしているか。
(12) 困難なことや面倒なことから逃げずに立ち向かっていけるか。
(13) 仕事を進めるに当たり費用と効果について検討しているか。
問4 身につけたい能力(5項目を選択)
1.パソコン2.業務遂行上の専門知識3.文書作成4.法律知識
5.業務遂行上の技術6.体力7.コスト感覚8.市民感覚
9.情報収集能力10.企画力11.創造性開発12.問題解決能力
13.政策立案能力14.意思決定力15.事務改善16.提案能力
17.プレゼンテーション18.接遇マナー19.交渉力・折衝力
20.クレーム対応21.人間関係22.リーダーシップ
23.会議運営と司会24.討議能力25.部下の育成、指導法
26.カウンセリング能力27.メンタルヘルス28.法制執務
29.統計解析30.簿記31.手話32.語学33.その他
問5 望ましい職員像(3項目を選択)
1.意識・意欲のある職員2.人間性が豊かな職員3.広い視野で総合的に判断・行動できる職員4.対応・処理(問題解決)ができる職員5.自己啓発・自己管理に努める職員6.接遇のよい職員7.情報収集・問題発見に取り組む職員8.企画立案・政策形成ができる職員9.説得・交渉・対人能力のある職員10.実務遂行ができる職員11.長期的視点で考えることができる職員12.連携・協働ができる職員13.リーダーシップがある職員14.コスト感覚のある職員15.個性的で創造性のある職員16.その他

問6 望ましい上司像(2項目を選択)
1.部下への対応ができる上司2.指導力がある上司3.取り組む姿勢が積極的な上司4.意識・意欲のある上司
5.職場管理ができる上司6.政策形成・決定能力がある上司7.仕事上の知識のある上司8.対外的な調整力のある上司9.その他
問7 望ましい部下像(2項目を選択)
1.積極的に仕事に取り組む部下2.自分の意見をはっきり言える部下3.仕事の内容や目的・目標を理解している部下
4.上司に報告・連絡・相談ができる部下5.向上心のある部下6.その他
問8 理想の職場像(3項目を選択)
1.自由に意見が言える職場2.信頼・人間関係のよい職場3.相談・団結・協力体制のよい職場4.明るく風通しがよい職場5.仕事への情熱にあふれる職場6.基本方針の共通認識がある職場7.常に反省と討議が行われる職場8.研修や職員の能力向上に努めている職場9.各自の役割や事務分担が明確な職場10.執務環境がよい職場11.効率のよい職場12.人事や評価が公平な職場13.計画・改善に全員が参加する職場14.情報が共有されている職場15.管理職や所属長がしっかりした職場16.指揮命令がよい職場17.その他

4 調査結果

(1)職場の特性
 全職員の傾向をみると、「職員同士が力を合わせて仕事を進めているか」「職員が役割を認識しているか」「仕事の担当・責任の範囲を明確にしているか」「職員が先輩に相談しているか」において高いポイントとなっています。
 一方、「仕事の成果について確認する機会を設けているか」「新しいアイディアを積極的に試そうとしているか」「将来必要となる知識・能力の教育に力を入れているか」においては、中間点を上回ってはいるものの、低い傾向にあります。
 なお、階層別に結果をみると、「将来を見越して目標・計画を立てているか」「意思決定の場面に職員を参加させているか」「上司が組織の戦略や方針を伝えているか」において、課長級以上の階層では高いポイントとなっていますが、補佐以下の階層のポイントは低く、認識に乖離があります。
(2)個人能力の特性
 全職員の傾向をみると、「与えられた仕事を最後までやり遂げているか」「情報に積極的に目を向けているか」「仕事に関して相談できる人がいるか」においてポイントが高くなっています。
 一方、「自分の意見をきちんと主張できるか」「組織の戦略や方針を理解しているか」「自分の能力向上のために努力しているか」「費用と効果について検討しているか」においては、中間点は超えているものの、低い傾向にあります。
 なお、階層別に結果をみると、課長級以上の階層では「情報に積極的に目を向けているか」「組織の戦略や方針を理解しているか」「費用と効果について検討しているか」においてポイントが高くなっていますが、これらの項目は、役職が下がるにつれて低くなっています。また、「自分の努力によって仕事などの成果が決まると考えるか」においても、課長級以上の階層ではポイントが高いのですが、補佐以下の階層のポイントとの間にかなりの差が生じています。

(3)身につけたい能力
 「パソコン」を挙げた職員の割合が突出しており、次点が「業務遂行上の専門知識」となっています。次に「体力」「問題解決能力」「業務遂行上の技術」「法律知識」が続いており、その他には「語学」「人間関係」「交渉力・折衝力」が高い割合となっています。

(4)望ましい上司像
 全職員の傾向をみると、「指導力がある上司」「職場管理ができる上司」が高い割合となっており、「部下への対応ができる上司」「取り組む姿勢が積極的な上司」と続いています。
 なお、階層別に結果をみると、上位の階層になるほど「政策形成・決定能力がある上司」を選んだ割合が高いこと、課長、補佐の階層では「対外的な調整力のある上司」を選んだ割合が特に高いこと、主任以下の階層では、「部下への対応ができる上司」を望む割合が高いことなどが挙げられます。

(5)望ましい職員像
 全職員の傾向をみると、「広い視野で総合的に判断・行動できる職員」「意識・意欲のある職員」「人間性豊かな職員」の3項目の割合が特に高くなっています。続いて「対応・処理ができる職員」「連携・協働ができる職員」「長期的視野で考えることができる職員」「説得・交渉・対人能力のある職員」の順となっています。

(6)望ましい部下像
 「積極的に仕事に取り組む部下」「仕事の内容や目的・目標を理解している部下」「上司に報告・連絡・相談のできる部下」の順に割合が高くなっています。
 一方、「自分の意見をはっきり言える部下」の割合は低く、課長・補佐の階層では特に低い結果となっています。

(7)理想の職場
 「信頼・人間関係のよい職場」を挙げる割合が突出して多くなっています。続いて「自由に意見が言える職場」「相談・団結・協力体制のよい職場」「仕事への情熱にあふれる職場」「明るく風通しのよい職場」「人事や評価が公平な職場」「基本方針の共通認識がある職場」「情報が共有されている職場」「管理職や所属長がしっかりした職場」の順となっています。

資料編 2 豊川市人材育成基本方針策定ワーキングチーム活動経過

(1)構成員(所属・補職は作業当時)

企画課 課長補佐 荘田 慶一
資産税課 課長補佐 佐竹 修
豊川駅東区画整理課 課長補佐 竹本 和男
下水管理課 課長補佐 内藤 嘉和
生涯学習課 課長補佐 今泉 英三
市民課 市民第二係長 若林 正昭
環境対策課 環境係長 宇野 常子
市民病院庶務課 庶務係長 原田 潔
消防本部総務課 庶務係長 若林 大幹
上水業務課 岩村 郁代
学校給食課 小平 智子
中心市街地対策課 山本 英樹
人事課(事務局) 課長補佐 伊藤 充宏
人事課(事務局) 桑野 研吾

(2)活動経過

第1回 平成14年7月23日
 事務局から構成員に対し人材育成基本方針策定の理由と活動計画について説明した。
 座長は決めず、進行は事務局で行うこととした。
 人材育成について職員アンケートを行い、その結果を踏まえ、チーム員の意見を集約し、策定作業に入ることとした。アンケートの結果は庁内LANに掲示し、多くの職員から意見を募ること、その意見を集約したものもワーキングチームに提示していくこととした。
 事務局からアンケートの方法と素案を提示した。回答方法について協議した結果、「個人が特定される方法では素直な意見が書きにくい」との意見が多く、「無記名では無責任な意見が増えはしないか」「OA化の時代に紙で行うのはどうか」との意見もあったが、無記名により、紙を使って行うことに決定した。
 回答については、職員の任意によるものとした。ただし、個人で人事課に持参する方法ではやりにくいので、課単位での取りまとめは行っていただくこととし、回答用紙を使用済み封筒などに入れてもらうことで、匿名性を高めることとした。

 アンケートの内容の精査については各チーム員が持ち帰り、調査項目の整理統合に対する意見を出してもらうこととした。意見は人事課まで送付していただき、それを集約したものを次回の会議で提示し、精査することとした。
 その他の発言と意見は、次のとおり。

  • 目標が大きすぎてイメージがわかない。
  • 目標はどんどん変わるものだが、そもそもどうして人材育成のマスタープランを作る必要があるのか今ひとつ腑に落ちない。
  • 他市では策定したものをどう生かしているのか。
  • こうした取り組みで、アンケートも自己啓発の機会になる。
  • 職員の意識改革が少しでもできれば良いのではないか。

第2回 平成14年8月1日
 事務局から、チーム員の意見を踏まえて調整したアンケートの案を提示した。
 設問の配置方法、質問項目の整理統合、追加すべき項目、回答用紙のレイアウトなどについて個々に調整を行った。また、強調すべき項目は目立つよう工夫を行った。
 その後、このアンケートをどのように方針に生かすかについて再確認の発言があり、いろいろな傾向を踏まえて方針策定のための材料にする旨事務局から回答を行った。
 アンケートの集約結果がまとまった後、それをチーム員に配布するので、それを踏まえ、目指すべき職員像と、階層別に求められる能力、意識について次回の会議までに人事課へ報告してもらいたい旨を事務局から説明した。
 (第2回と第3回の間に、アンケートを実施して集計を行い、結果を各チーム員に配布した。その後、各チーム員から、育成すべき職員像と、階別に職員に求められる能力・意識について報告を受けた。)

第3回 平成14年11月1日
 チーム員から報告があった、育成すべき職員像と、職階別に職員に求められる能力・意識について事務局で取りまとめたものを素案として提示した。
 素案に対する意見は、次のとおり。

  • 人材育成基本方針は、どこの市でも似たようなものとなるが、本市として特徴を出すにはどうしたら良いか。
  • アンケート結果が示す弱点を補充するだけでは戦略にならない。
  • 人材育成のキーワードは重要なので全面に出したらどうか。
  • シンプルなのも良いが、単語のみでわかりにくいのは避けたい。
  • 当然のことばかりではなく、現状より向上するためのものを。
  • 人づくり懇談会が設置されているので、それとの繋がりも必要。

 協議を行ううち、あるチーム員からの提案にチーム全員の同意があったため、その提案を基として育成すべき職員像を設定することとした。
 アンケートの結果に加え、この日の会議までに取りまとめた内容と、協議の経過を庁内LANで公表し、意見を募ることを事務局から提案し、了解を得た。
 また、次回の会議までに、今回までの内容を踏まえ、具体的にどのような方策を行っていくべきかについて各チーム員に検討を依頼した。
 (第3回と第4回の間に、各チーム員から、具体的な方策について報告を受けた。)

第4回 平成14年12月25日
 事務局として、具体的な方策を三分野に分けて整理したものを提示し、各チーム員の意見の集約を行った。
 その際に出された意見は、次のとおり。括弧内は、事務局の説明。

  • 方策を行った際に、チェックする体制について考えて欲しい。例えば、勤務評定と自己申告だが、個別の面接をやっているところとやっていないところがある。人材育成基本方針も、せっかくまとめても、チェック体制がないと、あるだけのものになってしまう。
    (勤務評定などに伴う面談については絶対に必要。チェック体制についてもその通り。)
  • 方針の実施計画は作るのか。単発的なものか。
    (実施計画的なものについては、そこまで考えるに至っていない。)
  • 目玉がないと思う。どこでもやっていることをやるだけでは意味がない気がする。
  • 各市でやっていても、人材育成の方策を体系化することに意味があるし、その中に目玉があれば、それが新しいのでは。
  • 事務局としてこれはやっていこうというものに限ってはどうか。
  • 市がやっていることと、市に欠けていることとを明文化することは意義がある。
    (やらなければならないものはある。方針そのものについては、各市がやっていることであっても、市として何も明文化していなければ、いわゆる上司の示す姿勢が、組織として目指していることなのか、個人としてそうしているだけのことなのかがわからない。明文化されていれば、『それはこうですよ』と言える。職員が目指すべき方向を職が共有できる。そういうことが重要。)
  • 組織の問題には踏み込むのか。係制の廃止とか。行政改革大綱の方針との整合性もあるが。
    (組織の問題は、行政課との連携が必要なので方針では踏み込みきれない部分がある。)

その結果、事務局から示した分類で概ねの了解を得たので、個別の方策について検討を行った。その際の意見は、次のとおり。

  • 勉強したい人にチャンスを与えることは、比較的今でもやっている。ただ、それで出てきたアウトプットの評価はあまりないが。
  • 市民協働の奨励というと、PTAで特別休暇が取得できるとかでないと奨励にならないのでは。協働の事例は、市民、町内、PTA、お祭りなど、おつき合いの意味もあるが、多岐にわたる。
  • 研究活動の支援は、奨励の方法によっては、課の仕事に関することを勉強しやすくする効果もある。高い目標を持たせることもできる。例えば豊橋市では、ドイツに行って学会で英語でスピーチしたりしている。どこの課にも、そういうチャンスが内在しているのだから。
  • スペシャリストの養成はぜひ行って欲しい。2、3年で替えられては現場が困る。
    県や地元と顔を作って、やっとできる事業もある。
  • 人づくり懇談会の柱は、国際化、科学技術、少子高齢化、環境問題の四つ。民間には人材がいるが、自治体にはいない。研修の中に盛り込んでいくべきではないか。
  • 基本方針ができたら、それを各職員が受け止めるために、『私は今年、何々をやります』といったものを出してもらうという仕掛けの意味で、個人目標を立ててもらうことはどうか。
  • 昇任試験は、テストの形式にとらわれることなく、自宅でも勉強したり、世界で起
    こっていることを知っておいたりするくらいの必要性を感じさせる契機として必要性がある。
  • 採用志願者には、ぜひ、職員像“5C”を明示して欲しい。
  • 勤務評定結果の職員へのフィードバック、これは是非やって欲しい。
    それから面談は4月と10月の年2回とか、具体的に示して欲しい。人を生かす方向のことはやるべき。ただ、課長が職員を一人ずつ呼び出して話し合う場所や時間がないのが困る点。
  • 職員のリフレッシュ空間の整備も望みたい。予算がかかるし、難しさもあるが、本当は部単位で一つくらいは部屋が欲しい。
  • メンタルヘルスは重要。相談できる体制を整備していかないと、もっと心を病む人が出る。いろいろなケースがあるので、外部で相談できるような体制は必要。
  • 仕事を離れて市民活動に参加することを嫌がる風潮がある。もっと積極的に参加すべき。
  • どこまでが市民活動かというのが難しいが、市民活動に参加しやすいことはとても重要なこと。

 多くの意見が各チーム員から寄せられたので、これらの意見を反映したワーキングチーム案を文章化し、次回開催前に提示し、さらに意見を出してもらうこととした。
 次回会議では、さらに意見を集約することとした。
(第4回と第5回の間に、第4回会議の意見を反映したワーキングチーム案を配布し、事前に意見の報告を受けた。)

第5回 平成15年3月14日
 各チーム員から意見の報告を受けた結果、主に次の点について意見の交換が行われた。括弧内は、その結果、意見を集約したもの。

  • アンケート結果と全体像がわかるフローチャートのようなものは方針の中に載せていくのか。
    (本市職員の人材育成面の傾向がわかるアンケート結果と、わかりやすさを高める概要図は重要なので載せていく。)
  • 方針が示す各方策の実施時期が明らかではないが、どうするのか。せめて目標年度くらいは示すべきではないか。
    (アクションプランについては、推進体制の中で考えていく。全体に関わることなので、ワーキングチーム会議だけでは決定しきれない。)
  • 女性登用の部分の表現が男性的な視点から、または強い権利意識を感じさせるように書かれている。再考を要する。
    (会議内において調整を行い、ワーキングチームとして文章を推敲して現在の形となった。)
  • 昇任試験が見当たらないが、どこに記載したのか。
    (事務局として、目標管理の制度の中で考えることとした。)
  • “5C”がもっと目立つよう副題として使用してはどうか。
    (表紙において使用していくこととした。)

 その後、全体を通して意見を求めたところ、同意を得られたため、ワーキングチームとしての最終案をこれによりまとめることとした。
 この後については、企画会議に提示し、承認を得るとともに、方針を全庁LANに掲示して引き続き全職員からの意見を募ることとした。

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