元金融マンが挑む!「豊川産農薬不使用バナナ」
国産バナナ生産者 アグリトラストネットワーク代表 早川知行
豊川市の新たな名産品として期待され、ふるさと納税の返礼品にも採用されている「ほのくにバナナ」。栽培を手がけるのは、元金融マンという異色の経歴を持つ早川知行さんだ。
とよかわ応援サポーターとして地域連携の輪を広げる早川さん。愛知大学との共同研究や、地元のプロバスケチーム「三遠ネオフェニックス」のサプライヤーなど、その活動はバナナ栽培の枠を超えてどんどん広がっている。
深い地元愛を原動力に、次世代に繋げる農業を目指して着実に歩みを進める早川さんに、現在の取り組みと豊川への想いを聞いた。
イチゴ農家の長男。堅実な信用金庫職員になったものの
豊川市市田町出身。祖父の代から続くイチゴ農家の長男として生まれた。体を動かすのが好きで、小中学生の時には剣道、高校からはバスケットボールに夢中になった。今もプライベートではミニバスケのコーチなどをしている。クリエイティブなことに興味があったが、職業については「堅実×地元」と考え、大学卒業後は地元の信用金庫の職員になった。
27歳の時、農業の要だった父が他界。農家を継ぐことを考えたが、安定を選択した。ほどなくして母はイチゴ農家の廃業を決めた。自分は米作りなどの作業を手伝いつつ、信用金庫の職員として多忙な日々を送り続けた。
しかし約10年が経ったころ、定年後のビジョンが見えない自分に不安を感じ、思い悩んだ末、40歳で信用金庫を退職した。その後、転職を機に実家の農地の将来を真剣に見つめ直し、「しっかり儲かる仕組みを作り、息子の世代へスムーズに引き継げる農業をやりたい」という想いが芽生えて就農を決意した。

幼稚園年少の時

信用金庫時代(11番)
国産バナナに勝ち筋見出す
最初はナスやピーマンといった露地野菜を作り、産直で販売。しかし、旬の野菜は競合が多く、価格競争に巻き込まれる。沖縄の四角豆など珍しい野菜にも挑戦してみたものの、現実は甘くなかった。そこで、消費者視点から改めて市場を分析。国民的フルーツとして圧倒的なシェアを誇りながらも、その99.9%を輸入に頼っている「バナナ」に目を付けた。国内自給率わずか0.1%という、とても希少な「国産バナナ」市場への参入こそが、最大の勝ち筋になると思ったのだ。
市とJAなどが提供している農地情報バンクを活用し、栽培に適した約1,500平方メートルのハウスを見つけた。栽培技術は鹿児島県の先進農家から学び、2024年の春に豊川でのバナナ栽培をスタート。ブランド名は「ほのくにバナナ」。東三河の古来の呼び名にちなんだ。学んだ通りに実践すると、初年度から順調に収穫することができ、自信につながった。2年目からはさらに付加価値を高めるため、農薬だけでなく化学肥料も一切使わない栽培へ踏み切った。水と光合成だけで、バナナ本来の味を引き出せると考えた。
ブランド名は「ほのくにバナナ」
約150本のバナナを植えたハウス
農薬・化学肥料不使用へのこだわり
実は、バナナは木ではなく、大きな「草」。茎は、一度実を収穫すると2度と実をつけずに枯れる。地面の下にある「地下茎」から新しい芽が次々と生えてくるため、何年も生き続ける多年草だ。一年でハウスの天井に付いてしまうくらい成長が早い。そのため、バナナは、とにかく多くの水を欲する。だから生産者にとって、最も苦労するのは日々の水やりだ。特に夏場のハウス内は日中の気温が40度以上になるため、早朝4時から大量の水を手作業で撒いている。散水機の利用だけでは追いつかない。
通常バナナは、葉が40枚程度開くと花芽をつけ始め、収穫目安は100日程度。房の下のほうから、のこぎりで順に切り取っていく。外国産バナナが3〜4か月ほどで収穫されるのに対し、ほのくにバナナは5〜6か月かけてじっくり光合成をさせ、追熟によって甘みと香りをしっかり乗せている。現在の収穫量は年間3.2トンと順調だ。農薬・化学肥料不使用で育てている最大の特徴は、「皮ごと食べられる」ことだ。外国産は検疫のため消毒されることが多く、皮をむいて食べるのが一般的だが、ほのくにバナナは輪切りにして皮ごと味わうことができる。皮には食物繊維やカリウムなどの栄養素も含まれており、その価値にも注目だ。

ラグビーボール状の苞(ほう)がめくれ、そのすぐ上で小さなバナナの実(雌花)が何段も育っている様子

バナナの追熟
農業を楽しく!地域を盛り上げるヒーロー「バナナイト」
「ほのくにバナナ」を地域ブランドとして発信していくため、公式キャラクター「バナナイト」を考案した。バナナを剣に見立てた騎士(ナイト)がモチーフで、衣装は通販で、小物は100円ショップのもので自作した。夏場は死ぬほど暑いが、この思い切った発信のおかげで地域でも少しずつ認知されるようになってきた。お手本は先を行く先輩、キクラゲの妖精「けっぴー」やアスパラ農家の「あっぱらまん」。個性的な農業キャラクターの彼らとはたびたび交流し、地域農業を盛り上げるべく、情報交換をする間柄だ。

バナナイトに扮して
「豊川でしか買えない」新たな名物・特産品を目指して
豊川市のふるさと納税返礼品に参加し、最近はとよかわ応援サポーターにもなった。愛知大学の授業カリキュラムの研究テーマにも選ばれ、大学とタッグを組んでバナナの皮に含まれる栄養素の科学的なエビデンスを集め、高級レストランへの提案材料に活用していく予定だ。さらに、学生たちと一緒に葉や皮を使ったおもしろい商品開発やマーケティング戦略を仕掛けていく計画もあり、産学連携による新たな展開に今からワクワクしている。

フィールドワークでハウスを訪れた、愛知大学の学生たち

熱心に観察
究極の目標は、「バナナを使って豊川を元気にすること」。大学時代を除いてはずっと地元で暮らしてきたので、豊川への愛着は人一倍強い。高品質・小ロットで『豊川でしか買えない特別なお土産』を作り、それを目当てに多くの人が豊川を訪れるような未来を、本気で目指している」
ゼロから始めた、バナナ栽培。ありがたいことにどんどん忙しくなり、やりたいことも山積みで、正直なところ「そろそろ一緒に走ってくれる相棒が欲しい」段階に入ってきた。しかし、ビジネスの成長期において焦りは禁物だ。駆け足で進みすぎて転んでしまわないよう、一段一段着実に階段を登ることを心掛けている。

1本、1本丁寧に包装したほのくにバナナ
そんな自分のライフワークであり、原点でもあるのがバスケットボール。今でもプライベートでミニバスケのコーチや審判を続けているが、その縁もあって、現在は地元のプロバスケチーム「三遠ネオフェニックス」のオフィシャルサプライヤーとしてバナナを提供し、選手たちをサポートしている。試合会場のブースではバナナやジェラートを販売しており、地域での認知度アップとファンづくりを地道に広げている最中だ。

ふるさと納税返礼品にもなっている冷凍バナナ

ほのくにバナナのジェラート

ミニバスケットボールのコーチとして
DATA

早川知行
豊川市在住 「ほのくにバナナ」生産者
信用金庫職員などを経て40代で家業の農家を継承。
2024年に愛知県豊川市初の国産バナナ農園を開園し、農薬・化学肥料不使用で皮ごと食べられる「ほのくにバナナ」を生産。
地域を代表するお土産ブランドへの育成を目指す。
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更新日:2026年07月17日