「広報とよかわ」2017年2月号(MY COLOR)
更新日:2017年2月1日
MY COLOR
きらっと☆とよかわっ!輝くひとVol.23
さまざまな分野で活躍する豊川市出身のトップランナーを紹介します
さまざまな方向からチャレンジし続ける
〈工学者〉板倉 文忠さん
携帯電話やスマートフォンなどの音声通話技術の基礎を築くなど、科学技術分野の発展に大きな貢献をした、名古屋大学名誉教授の板倉文忠さんにお話を伺いました。
小学生のころは、理科少年と呼ばれていた板倉さん。「自宅の勉強部屋に実験装置を作り、科学図鑑に載っている電波や電気の実験を再現することに夢中だった」と振り返る。友達の親が市内にある名古屋大学の研究所に勤めていたこともあり、頻繁に研究所を訪ねた。そこで、本格的な研究を目の当たりにして「大好きな研究を仕事にできたら最高だ」と思い、科学者になろうと決めた。
もともと離れた場所に音を届けるという電波の仕組みに興味があったことから、中高生になるとアマチュア無線の通信に没頭。大学では電波科学を学び、4年の夏には東京にある通信事業を手掛ける研究所で、人工衛星システムの受信機の開発に携わった。「この衛星が、日米間初のテレビ衛星中継を成功させたとき、とても嬉しかった」と話す。
大学院に進み、教授から「電波の研究には、数学や物理学の原理・原則をもっと知ることが必要だ」と言われ猛勉強。苦労したが、ここで得た数学や物理学の知識が、後に研究の中で大いに役立つことになる。
大学院では音声の伝達方式を研究し、卒業時には音声の特徴を捉えて伝達するという今まで無かった新たな方式を発表。これは、音声をそのままデジタル化して送る従来の方式に比べて、データ量を20分の1にできる画期的なアイデアだった。しかし、まだ実用化の段階ではなかったため改良を重ね、感度や効率を向上させた方式の開発に成功。この方式は、高品質な音声を安定して届けることができるため、開発から約40年経った今でも、音声通話技術として世界中で使われている。
その後、名古屋大学や名城大学で教壇に立ち、後進の育成に努めた板倉さん。「何度も壁にぶつかっても、自分を信じて、さまざまな方向からチャレンジし続けることがたいせつ」と語る。
現在も研究を続けているという板倉さんの挑戦を応援したい。
プロフィール
板倉 文忠(いたくら ふみただ)
八南小、中部中、時習館高校を卒業し、名古屋大学卒業後、大学院で博士号を取得。NTTやベル研究所にて、現在でも使われている音声通話技術の基となる技術を発明。紫綬褒章、C&C賞などの賞を受賞。