刑を終えて出所した人等の人権と再犯防止について
更新日:2023年12月18日
刑を終えて出所した人等ってどんな人
第2次人権教育・啓発に関する豊川市行動計画における重要課題の一つに「刑を終えて出所した人等」があります。それでは、刑を終えて出所した人等とはどのような人なのでしょうか。
罪を犯し、警察・検察の捜査の結果、起訴されると裁判を受けることになります。裁判で有罪となり、実刑が確定すると、懲役や禁固などの刑が執行され、刑務所などの施設に収容されます。その後、出所の要件を満たすと、出所し、社会復帰することになります。この満期出所した人のほかに、仮釈放で出所した人や、少年であれば、非行をし、少年院に入院し、矯正教育等を受け出院(退院または仮退院)した人など、これらの罪を償った人々が刑を終えて出所した人等です。
確かにこれらの人々は、過ちを犯してしまいました。しかし、その罪ときちんと向き合い、刑務所などで更生のための矯正教育を受け、社会で再出発しようとする、これら刑を終えて出所した人等は、私たちと同じ社会の一員であることに何ら変わりはないのです。
社会の理解と協力
出所・出院した人が社会復帰するにあたって、何より重要なのは本人の社会復帰への強い意志であることは言うまでもありませんが、本人の意欲と努力だけで更生しようとするのは大変困難なことです。きちんと罪を償って、社会復帰のために努力している人にとって、周囲の理解・協力は大きな力となります。
しかし、社会復帰を目指す人の中には、地域社会の偏見などから、自分の居場所がない、住む所が確保できないなどといった厳しい現実に直面することも少なくありません。こうした人たちが、就労したり住居を確保したりする際に不利益を受けることがないよう、社会全体で支援していかなければなりません。
再犯の現状
刑事施設や少年院から出た後、再び犯罪や非行をしてしまうケースは少なくありません。警察庁犯罪統計によると、刑法犯検挙者数は、減少傾向にありますが、再犯者数はあまり減っていません。再犯者率は近年、顕著な増加傾向ではありませんが、平成28年以降ほぼ横ばいとなっています。
このような状況から、犯罪のない、安全で安心して暮らせる社会を実現するためには、刑事施設や少年院を出た人による再犯や再非行を防止することが重要な課題となっています。
再犯を防ぐために必要なこと
それでは、出所・出院後、社会を構成する健全な一員として生活を立て直し、社会復帰を果たす人と、再び犯罪や非行をしてしまう人とは、どこが違うのでしょうか。犯罪や非行の背景には様々な要因が複雑に絡み合っており、特定の要因と結びつけることは困難ですが、ヒントとなる統計があります。
保護観察(後述)終了時の職の有無と再犯率の統計では、保護観察終了時に、無職であった人の再犯率が、職があった人の再犯率の約3倍と高く(平成25年から29年の実績)、入所受刑者の犯行時の居住状況別構成比の統計では、初入者よりも再入者の方が、住所不定の人の割合が高くなっています。また、適当な帰住先と再犯に至るまでの期間の統計では、刑事施設からの出所時に適当な帰住先のない人ほど再犯に至るまでの期間が短くなっています。
このようなことから、再犯を防ぐためには、「仕事」と「住居」がある環境を整えることが特に重要と考えられています。
社会復帰に向けた支援の取組
刑務所出所者などが社会復帰するにあたっては、保護観察官や保護司、様々な関係機関・団体などが連携し、刑務所出所者などが、住む場所や仕事を見つけて地域社会の中で自立し、円滑に社会復帰ができるよう、保護観察をはじめとする更生保護の様々な活動をしています。
保護観察
保護観察は、犯罪をした人または非行のある少年が、実社会の中でその健全な一員として更生するように、保護観察官や保護司が指導監督及び補導援護を行うものです。
保護観察官
地方更生保護委員会の事務局と保護観察所に配置されている国家公務員で、心理学や教育学、福祉及び社会学等の更生保護に関する専門的知識に基づいて、更生保護や犯罪予防に関する仕事を行います。
保護司
犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支えるボランティアです。保護観察官と協働して、保護観察を受けている人と面接を行い指導や助言を行ったり、刑務所等に入っている人の帰住先の生活環境を整えたりします。豊川保護区では、57名の保護司が活躍しています(令和5年6月1日現在)。
生活環境の調整
生活環境の調整は、保護観察官や保護司が、刑務所などにいる人の釈放後の住居や就業先などについて調査し、改善更生と社会復帰にふさわしい生活環境を整えることによって、円滑な社会復帰を目指すものです。また、高齢や障害により特に自立が困難な受刑者などに対しては、円滑な社会復帰のため、各都道府県が設置する地域生活定着支援センターや刑務所などと連携して、出所後、速やかに地方公共団体や社会福祉法人などが実施する福祉サービスを受けることができるように、刑務所などに入所中から必要な調整を行っています。
さらに、釈放後、ただちに福祉による支援を受けることが難しい場合には、国が指定した更生保護施設(後述)で一時的に受け入れて、円滑に福祉サービスを受けるための調整や、社会生活に適応するための指導を行っています。
更生保護施設
身寄りのない刑務所出所者などを一定の期間保護し、生活指導や職業補導などを行って、その自立を支援する施設です。全国に103の更生保護施設があり、すべてが更生保護法人、社会福祉法人などの民間非営利団体により運営されています(令和3年1月1日現在)。
ハローワークなどの就労支援
刑務所などと保護観察所、ハローワークが連携して、刑務所出所者等に対する就労支援を行っています。刑務所などの入所者に対しては、ハローワーク職員による職業相談、職業紹介、職業講話などを実施しています。また、保護観察対象者などに対しては、ハローワークにおいて担当者制による職業相談・職業紹介を行うほか、セミナー・事業所見学会、職場体験講習、トライアル雇用、身元保証など様々なメニューを活用した支援を実施しています。
再犯防止のために、わたしたちにできること
更生保護の活動には、保護観察官や保護司のほかにも、官民のたくさんの人や団体が関わっています。ここでは、主なものを紹介します。
更生保護は、社会に暮らす人たちの理解と協力によって支えられている制度です。制度に関心を持ち、できることを考えてみませんか。
協力雇用主
犯罪や非行の前歴のために定職に就くことが難しい刑務所出所者などを、その事情を理解した上で雇用し、改善更生に協力する民間の事業主です。豊川保護区では、協力雇用主会を組織しており、14社の雇用主が協力しています(令和5年4月1日現在)。
更生保護女性会
女性としての立場から、犯罪・非行の未然防止のための啓発活動を行うとともに、罪を犯した人の更生支援や青少年の健全な育成を助け、非行のある少年の改善更生などに協力するボランティア団体です。豊川市更生保護女性会では、18支部312名程の会員が活躍しています(令和5年4月1日現在)。
BBS会
非行など様々な問題を抱える少年たちに、兄や姉のように身近な存在として接しながら、少年たち自身で問題を解決し、健全に成長することで、犯罪や非行のない地域社会の実現を目指す青年ボランティア団体です。
社会を明るくする運動
すべての国民が、犯罪や非行の防止と罪を犯した人たちの立ち直りについて理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪のない地域社会を築くための全国的な運動です。毎年7月の強調月間には、全国で様々な活動が展開されており、豊川市でも各種啓発活動を実施しています。