「広報とよかわ」2018年8月号(MY COLOR)
更新日:2018年8月1日
MY COLOR
きらっと☆とよかわっ!輝くひとVol.41
さまざまな分野で活躍する豊川市出身のトップランナーを紹介します
イモエネルギーが日本を救う
〈農学博士〉鈴木 高広さん
原子力発電にも化石燃料にも頼らないエネルギー社会をイモの力で実現しようと研究している、近畿大学生物理工学部教授の鈴木高広さんにお話を伺いました。
御津町の農家に生まれた鈴木さん。家族の生活が少しでも楽になるようにと、幼い頃から農業を手伝っていた。高校3年生の頃、海藻から石油が作れるという記事をきっかけに生物とエネルギーの関係に興味を持ち、研究者を目指すため、名古屋大学農学部へ入学。学生時代は生物の研究に没頭し、微生物により分解される生分解性プラスチックの実用化に貢献した。
大学卒業後は国内外での研究員生活を経て、東京理科大学で助教授を務める。その時の研究内容が、生物を使ってエネルギーを作る技術だった。しかし、エネルギーを生み出すために多量のエネルギーを使う非生産的な方法に疑問を感じ、視野を広げるため民間企業への就職を決意。10年間の民間企業での経験で得た知識から、最も生産的な方法は植物からエネルギーを作る方法であると気付いた。
2010年には近畿大学の教授に着任。さまざまな植物の中でサツマイモが、利用方法や栽培方法の観点から最も効率の良い植物であると突き止めた。栽培したイモは乾燥させて木質チップの代わりに燃やしたり、エタノールを抽出したり、メタン発酵させてガスを利用したりと、さまざまな発電に利用できる。また、降り注ぐ太陽光の3割程しか光を必要としていないため、土中に植えるのではなく、土を入れた袋を用いて空中で栽培する方法により、収量の増加を図った。「日本が1年間に消費する食料の総カロリー量は、国内の耕作放棄地でイモを空中栽培することにより賄える。また、国土の3割の広さを使えば、日本のエネルギー問題も解決できる」と語る。
現在は、イモ発電の実用化のため、燃料用イモの品種改良や、より効率の良い設備の開発に取り組む。さらに、イモの空中栽培を広めるため、全国各地で普及活動を行っている。「将来的には各家庭でイモ発電ができるようにしたい」と話す鈴木さんの挑戦を応援したい。
プロフィール
鈴木 高広(すずき たかひろ)
御津南部小、国府高校、名古屋大学卒業後、大学院で博士号を取得。在学中、生分解性プラスチックの基となる技術を開発。2010年近畿大学の教授に着任。現在、イモ発電を実現するため、イモの品種改良や、設備の開発、各地で空中栽培によるイモの栽培方法を伝える活動を行っている。