「広報とよかわ」2022年3月号（特集）

特集　信頼される医療のために

けがをしたり病気になったりしたとき、無くてはならない医療。市民病院では、高度医療を可能とする最新機器の導入、医師の採用、専門性の高い看護師の育成などにより、皆さんに安心して医療を受けてもらえる体制を整えています。今回の特集では、高度な医療提供を可能とする設備、それらを扱う人を紹介するとともに、進化し続ける市民病院の今をお伝えします。
詳しいことは、市民病院庶務課（電話：0533-86-1111）へ、お問い合わせください。

進化を続ける市民病院

昭和21年4月、豊川海軍工廠共済病院を受け継ぐ形で開設した市民病院。平成25年5月に施設の老朽化などで八幡町に移転し、令和2年12月には救命救急のための集中治療科を設置しました。今では31の診療科を持ち、年間延べ25万8千人（令和2年度）が受診する病院となりました。令和4年には、専門医の体制などが整い、市内では出来なかった心臓血管外科手術が可能となります。今後も、より高度な医療を提供できるよう努めていきます。

地域の中核病院として

市民病院は、豊川市だけでなく、新城市などの東三河北部地域の他、県内外からも多くの患者が受診するなど、広域の医療を担う中核病院です。かかりつけ医から紹介された方や重症の救急患者に医療を提供する一方、病状が安定した方をかかりつけ医の診療につなげたり、在宅医療の情報を提供したりするなど、患者の意思を尊重しながら、いち早く日常に戻れるように支援を行っています。

豊川市民病院ってどんな病院？

24時間体制で急患や重篤な症状に対する治療や手術を行う急性期に対応した病院です。
急性期とは
症状が急に現れる時期、病気になり始めの時期をいいます。検査や処置、手術が必要となることが多く、その期間に患者が生命の危機と隣り合わせになることも珍しくありません
ベッドの数は500以上！
一般病床454床、精神病床65床、結核病床8床、合計527床が完備されています。
なんと1000人以上！
1日あたり約1100人の患者が訪れ、約1000人のスタッフが働いています。
災害にも強い！
震度7の揺れを震度4程度に軽減できる免震装置の他、発電施設、燃料の貯蓄タンクなどがあり、災害時にも医療の提供が行えます。災害発生時にも医療活動の拠点となる、災害拠点病院に指定されています。

地域医療の要　救命救急センター

患者の症状の度合いに応じて対応できる医療機関が定められており、市民病院は、市内で唯一、あらゆる症状に対応できる三次救急医療機関に位置付けられています。診療所などで診ることが困難な病気やけが、入院や手術が必要な場合など、より重症・重篤な患者や救急患者に対応できる設備と、経験豊富な医師が対応にあたっています。
　
三次救急（重症度・緊急度　高）
対象　命に危険が及ぶ重篤患者
受入先　救命救急センター
二次救急（重症度・緊急度　中）
対象　入院を必要とする重症患者
受入先　救急病院など
一次救急（重症度・緊急度　低）
対象　入院を必要としない軽症患者
受入先　診療所、休日夜間診療所など
　
一般の診療所が開いていない休日や夜間の三次救急に対応できる救命救急センターを令和元年12月に開設。生命の危機にひんしている患者に対して、高度な医療を24時間体制で提供しています。令和2年度は、約1万3千人の患者を診療しました。

がん診療の充実を目指して

がんは2人に1人がかかると言われている病気です。症状は一人ひとり異なり、きめ細かな対応が求められます。市民病院では現在、専門的ながん診療の提供、がん診療地域連携の構築、患者や家族に対する相談支援体制の強化を進め、愛知県がん診療拠点病院の指定に向けて取り組んでいます。

がん診療を認定看護師がサポート

がん性疼痛看護認定看護師・福地 妙子、がん化学療法看護認定看護師・平松 克代
がんに伴う体のつらさは一人ひとり異なります。治療方法や療養生活について、医師、看護師など多くのスタッフが連携し、患者さんが自分らしく過ごせるようサポートしています。
認定看護師とは
特定の分野において深い知識と熟練した技術を持つと認められた看護師です。豊川市民病院には、がんの他、糖尿病や認知症など、13分野19人の認定看護師が在籍しています。

安心を届ける設備と人

安心してもらえる医療には、設備だけでなく、それらを安全に使えるスタッフが不可欠です。ここでは、設備の紹介とともに、手術、治療、検査に携わる人を紹介します。

手術支援ロボット　ダヴィンチ

腹部に開けた小さな穴から手術器具を取り付けた直径8ミリメートルのシャフトと内視鏡を挿入し、拡大画像を見ながら操作して手術をします。拡大画像は立体的に表示され、緻密な操作が可能。傷が小さく、術後の回復が早いため、患者の負担を軽減できます。
消化器外科・柴田 直史 医師、泌尿器科・遠藤 純央 医師、泌尿器科・守時 良演 医師、産婦人科・森 亮介 医師
大きくメスを入れる手術が主流でしたが、ダヴィンチにより選択肢が増えました。それぞれの長所・短所を総合的に考慮した上で、最適な方法を提案しています。

術中支援装置　オーアーム イメージングシステム

X線を用いて手術中に撮影できる画像システムです。最先端の移動式手術機器で、国内で90台が稼働しています。
脊椎脊髄病センター・大塚 聖視 医師
ボルトを入れる箇所を手術中に画像で確認できるため、より安全で正確に手術を行えます。

磁気共鳴断層撮影装置　MRI

強い磁石と電波を用いて、鮮明な立体画像を撮影することができる装置です。X線を使わないため、放射線被ばくがない検査を行うことができます。
放射線技師・赤川 佳寛
患者さんとの会話の中で、最適な寝かせ方、クッションの入れ方を考え、提案しています。

高精度放射線治療装置　トモセラピー

悪性腫瘍に放射線を集中的に照射して治療する装置です。360度任意の方向から照射できるため、正常な組織への照射線量を抑えることができます。
放射線技師・松下 浩基
高い放射線量を扱うため、安全面に配慮し、過不足なく、患部だけを狙って治療を行っています。

陽電子放射断層撮影装置　ペットシーティー

放射線医薬品を注射して悪性腫瘍などを識別するペットと、体の断面を撮影するシーティーが一体化した装置です。全身を一度に検査できます。
放射線技師・名倉 広剛
検査当日に分からないことや不安がないように、丁寧な事前説明を心掛けています。

新型コロナにチーム医療で対応

令和2年2月から中等症以上の陽性患者の受け入れを始め、令和4年1月現在までに約250人の入院診療を行いました。
新型コロナウイルス感染者が急激に増えた際にも迅速に対応できるよう、呼吸器内科医師に加え、他の診療科医師数人で構成されたチームを複数編成し、ローテーションを組んでいます。また、合併症の有無、重症度など、症状が異なる患者一人ひとりに対してきめ細かな診療を行えるよう、医師だけでなく看護師、診療技術職、事務などの多職種で情報を共有し、対応にあたっています。

地域完結型の医療を実践　豊川市民病院院長 松本 隆

市民病院の理念は「信頼される医療の提供を通じて、地域住民の健康づくりに貢献する」。そのためには、患者の意思を尊重し、丁寧に説明することが大切だと考えています。また、住み慣れた地域で、その人に合った医療を受けられるようにするには、高度な医療提供だけでなく、医療・福祉・介護分野の連携が重要で、それぞれの関係者が協力できる体制の確立に取り組んでいます。
今後、市民病院では高度医療にあたる心臓血管外科手術を開始するとともに、愛知県がん診療拠点病院の指定に向けた取組を充実させていきます。これからも、市内で診察、検査、治療まで行える地域完結型の医療を実践していきます。
今後の重点的な取組

• 心臓血管外科において手術を開始
• 愛知県がん診療拠点病院として、高度な判断に基づき放射線治療や化学療法、手術など最適な診療を提供
• 新型コロナウイルス感染症重点医療機関として充実した医療提供体制を整備